親から実家を相続した——。そう決まった瞬間、多くの人が最初にぶつかるのが「そもそも、これは誰に相談すればいいのか」という壁です。 登記、相続税、売却、きょうだい間の話し合い……。やることは山ほどあるのに、窓口が見えません。
やっかいなのは、相続の専門家が1人いれば全部片づく、というわけではない点です。 名義変更は司法書士、相続税は税理士、売却や活用は不動産会社、もめ事は弁護士——と、「やりたいこと」ごとに相談先が違います。 ここを取り違えると、二度手間になったり、割高な費用を払ったりしかねません。
この記事では、実家を相続した方(とくに築古戸建て投資の入口に立つ方)が自分で相談先を選べるように、 ①目的別の早見表 → ②名義変更は司法書士 → ③相続税は税理士 → ④売却・活用は不動産会社 → ⑤もめ事は弁護士 → ⑥相談の順番 → ⑦揃える資料の順に整理します。 制度の説明には法務省・国税庁の公的情報だけを根拠にします(2026年10月時点)。
目次
① まず結論|相談先は「やりたいこと」で決まる
このセクションの要点は「相談先は『誰が偉いか』ではなく『自分が今、何をしたいか』で選ぶ」ということです。まずは下の早見表で、自分の状況に近い行を見てください。
相続にまつわる専門家は、それぞれ独占業務(その資格でないとできない仕事)を持っています。 だから「全部できる1人」を探すより、目的に合った専門家に、必要なところだけ頼むのが、結局いちばん速く・安く済みます。
| やりたいこと | 主な相談先 | 何をしてくれる |
|---|---|---|
| 名義を自分に変えたい | 司法書士 | 相続登記(不動産の名義変更) |
| 相続税が心配 | 税理士 | 相続税の試算・申告、特例の判定 |
| 売りたい・貸したい | 不動産会社 | 査定・売却・賃貸の客付け |
| 分け方でもめている | 弁護士 | 遺産分割の交渉・調停の代理 |
※上記は代表的な役割分担です。税理士事務所が司法書士と提携してワンストップで対応するなど、1つの窓口で複数をまとめられる場合もあります(2026年10月時点)。
迷ったときの原則はシンプルです。「権利(名義)」なら司法書士、「税金」なら税理士、「お金に換える(売る・貸す)」なら不動産会社、「争い」なら弁護士。 この4つの軸さえ押さえれば、次に誰のドアを叩けばいいかで迷わなくなります。
② 名義変更(相続登記)は司法書士
このセクションの要点は「実家の名義を自分(相続人)に変える『相続登記』は司法書士の仕事であり、2027年3月までに期限が迫っている」ということです。
亡くなった親の名義のままでは、実家を売ることも、担保に入れて借りることも、基本的にできません。 まず必要なのが、不動産の名義を相続人に変える相続登記です。これを専門に扱うのが司法書士です。
しかも相続登記は、今や義務です。 法務省によると、相続登記は2024年4月1日に申請が義務化され、それより前に発生した過去の相続も対象。 正当な理由なく期限内に申請しないと、10万円以下の過料の対象になり得ます(法務省「相続登記の申請義務化について」・2026年10月時点)。
過去の相続については経過措置期間が2027年3月31日までとされており、期限まで半年ほどです。 「祖父名義のまま何代も放置していた実家」も、さかのぼって登記が必要になるケースがあり、早めの着手が肝心です。 期限と手続きの詳細は相続登記の義務化はいつまで?2027年3月期限と過料10万円の回避にまとめています。
司法書士に頼むと、戸籍の収集・遺産分割協議書の作成・法務局への申請まで任せられます。 相続人や不動産の数が少なければ自分で申請することも可能ですが、数次相続(名義人がすでに亡くなり相続が重なっている)や相続人が多い場合は、専門家に任せたほうが確実です。
③ 相続税・確定申告は税理士
このセクションの要点は「『税金まわり』は税理士。相続税がかかるか、売ったときにどんな特例が使えるかは、素人判断が一番損をしやすい」ということです。
税金の相談先は税理士です。ただし、相続した実家で関わる税金は大きく2種類あり、タイミングも使う特例も違うので整理しておきましょう。
- ①相続したとき:相続税。遺産全体が基礎控除を超えると、相続税の申告・納付が必要です。実家の評価額(土地は路線価など)をどう計算するかで税額が変わります。
- ②売ったとき:譲渡所得税。相続した家を売って利益が出ると税金がかかりますが、一定の要件を満たせば「相続空き家の3000万円特別控除」で大きく減らせる場合があります。
とくに注意したいのが②の3000万円控除です。 これは「売る前の行動」を一つ間違えるだけで対象外になる、落とし穴の多い制度です。相続後に貸してしまった、現況のまま売った、期限を過ぎた——といった理由で使えなくなるケースが後を絶ちません。
制度の全体像は相続空き家の3000万円特別控除とは|要件と手続きをやさしく解説で、 つまずきやすいパターンは相続空き家の3000万円控除が使えなかった7つの理由と回避法で確認してください。 「売るか貸すか」を決める前に税理士に相談しておくと、知らずに特例を失う事故を防げます。
④ 売却・貸す・活用は不動産会社
このセクションの要点は「実家を『お金に換える・使う』段階になったら不動産会社。ただし売却が得意な会社と賃貸が得意な会社は別」ということです。
名義と税金の見通しが立ったら、いよいよ出口です。売る・貸す・活用する——ここで頼るのが不動産会社です。 まずは無料の査定で、実家が今いくらで売れそうか・いくらで貸せそうかという「相場の現在地」を知るところから始めます。
ここで大事なのが、売却と賃貸では相談すべき会社のタイプが違うということです。 手離れよく現金化したいなら売買仲介に強い会社、貸して家賃収入を得たいなら管理・客付けに強い会社、というように、やりたい出口に合った会社を選ぶと話が早く進みます。
- 売りたい:まず査定。売れにくい立地・状態なら、値付けや売り方の工夫が要ります。相続した実家が売れないどうする?負動産化を防ぐ出口5つを参考に。
- 貸したい:そのまま貸すか、最低限直して貸すかで収支が変わります。相続した家を貸すと確定申告は必要?不動産所得の基礎で税務もあわせて確認を。
- 直してから売る/貸す:どこまで手を入れるかは損得の分かれ目。相続した実家はリフォームしてから売る?現況渡しとの損得で判断できます。
築古の戸建ては「直してから貸せば、負債だった実家が毎月家賃を生む資産に変わる」ことがあります。 貸す・売る・持ち続けるをどう決めるかの全体像は相続した実家は売る・貸す・持つ?判断の順番と損得にまとめています。
⑤ 分け方でもめたら弁護士
このセクションの要点は「『誰がどう相続するか』でもめているなら、最初から弁護士。司法書士や税理士は『争いの代理』はできない」ということです。
相続人が複数いて、遺産の分け方で話がまとまらない——このときだけは、相談先が弁護士になります。 きょうだい間の交渉を代理したり、まとまらなければ家庭裁判所の遺産分割調停を進めたりできるのは弁護士だけです。
注意したいのは、司法書士や税理士は手続きの専門家であって、依頼者の代理人として相手方と交渉することはできない点です。 「もう感情的にこじれている」「話し合いにならない」という段階なら、登記や税金より先に弁護士に相談したほうが、結果的に早く・円満に収まることが多いです。
実家が不動産1つだけで、きょうだいで分けにくい——という典型的な悩みには、分割方法そのものの選択肢もあります。 誰かが住む・売って現金で分ける・代償金を払うといった分け方の整理は実家を兄弟で相続したら?共有の落とし穴と分け方4つで解説しています。
⑥ 相談の順番|最初にやること
このセクションの要点は「いきなり専門家に電話する前に、『現状把握 → 方針 → 専門家』の順で動くと、相談が最短で済む」ということです。
相談先が4つに分かれていると聞くと身構えますが、動く順番はだいたい決まっています。 まず自分の状況を把握し、ざっくりの方針を決めてから、それに合う専門家に頼む——この順番が、二度手間と余計な費用を防ぎます。
相続した実家の相談の進め方(目的が決まれば相談先も決まる)
遺言を確認
(司法書士)
(税理士)
(不動産会社)
- ①相続人と遺言の有無を確認する:まず誰が相続人か、遺言があるかを確認します。ここでもめそうなら、この時点で弁護士に相談します。
- ②名義を自分に変える(司法書士):売る・貸すの前提になる相続登記を済ませます。2027年3月の期限も意識します。
- ③税金がかかるか確認する(税理士):相続税の要否と、売るなら3000万円控除が使えるかを、動き出す前に確認します。
- ④出口を実行する(不動産会社):売る・貸す・直すを、目的に合う会社に依頼します。
実家を相続した直後の全体の流れ(名義確認から方針決定まで)は、実家じまいは何から始める?費用と手順、後悔しない進め方にも手順でまとめています。 親が高齢で「相続が重なりそう」な場合の備えは老老相続で実家はどうなる?親が元気なうちにやるべきこともあわせてどうぞ。
⑦ 相談前に揃えておく資料
このセクションの要点は「手ぶらで相談に行くと話が進まない。最低限の書類を持っていくと、どの専門家でも一発で状況が伝わる」ということです。
どの専門家に相談するときも、共通して役立つ資料があります。すべて完璧に揃える必要はありませんが、手元にあるものを持参すると相談が格段にスムーズになります。
- 固定資産税の納税通知書:実家の所在・評価額の目安がわかります。毎年春に届くものです。
- 登記簿(登記事項証明書):今の名義・土地建物の内容を確認できます。法務局で取得できます。
- 亡くなった方・相続人の戸籍関係の書類:相続人が誰かを確定するために必要です。
- 遺言書(あれば):内容によって分け方や手続きが変わります。
- おおよその資産の一覧:実家以外の不動産・預貯金などをメモ程度でまとめておくと、相続税の見通しが立てやすくなります。
これらが揃っていれば、司法書士にも税理士にも不動産会社にも、同じ資料で状況を説明できます。 「何から集めればいいかわからない」という段階なら、まずは固定資産税の納税通知書を探すところから始めてください。
⑧ 次に読むべき記事
相続した実家の相談先は、「名義=司法書士/税金=税理士/売る・貸す=不動産会社/争い=弁護士」という目的別の軸で選べば迷いません(2026年10月時点)。 まずは現状を把握し、名義→税金→出口の順に、必要なところだけ専門家に頼むのが最短ルートです。
- 相続した実家は売る・貸す・持つ?判断の順番と損得(出口の全体像)
- 相続登記の義務化はいつまで?2027年3月期限と過料10万円の回避(名義変更)
- 相続空き家の3000万円特別控除とは|要件と手続き(税金)
- 相続した実家が売れないどうする?負動産化を防ぐ出口5つ(売却)
- 実家を兄弟で相続したら?共有の落とし穴と分け方4つ(分け方・もめ事)
- 実家じまいは何から始める?費用と手順、後悔しない進め方(手順の全体像)
- 空き家投資の始め方|格安中古物件投資入門ガイド(資産に変える全体像・ピラー)
まとめ
相続した実家で「誰に相談すればいいか」迷ったら、やりたいことで相談先を選ぶのが鉄則です。 名義変更は司法書士、相続税や売却時の特例は税理士、売る・貸す・活用は不動産会社、分け方のもめ事は弁護士——この4つの軸を押さえれば、窓口選びで遠回りしなくなります。
とくに相続登記は2027年3月31日の経過措置期限が迫り、売る・貸すの前提にもなります(法務省・2026年10月時点)。 まずは固定資産税の納税通知書を手元に、名義→税金→出口の順で、必要なところだけ専門家に頼んでいきましょう。
「相続した実家を、売るより貸して資産にできないか」とお考えなら、出口の設計はボロリッチの得意分野です。 物件の状態診断から直し方・貸し方まで、実践者の視点で一緒に考えます。