買い手がつかず空き家のまま残る郊外の一戸建て。相続した実家が売れず負動産化するイメージ

「相続した実家を売りに出したのに、1年たっても買い手がつかない」—— 2026年7月末、相続不動産の売却が長期化・断念するケースを取り上げる報道が相次ぎ、 売れない実家が『負動産』になる問題があらためて注目されています。

やっかいなのは、売れないあいだも固定資産税・保険料・管理費だけは出ていくこと。 「使わない・売れない・でもお金はかかる」——この状態が続くほど、 実家は資産どころか毎年お金を吸い取る負動産になっていきます。

この記事では、ニュースの紹介はここまで。 「で、売れない実家をどうすればいいのか」に大半を割きます。 売れない理由を整理したうえで、負動産化を防ぐ5つの出口を 判断フローと比較表で、初心者の方にもわかるように解説します。

そもそも『負動産』とは?売れないと何が起きるか

要点:売れないあいだも固定費は止まらないため、放置するほど『持つほど損する不動産』になります。

負動産とは、持っているだけでマイナスを生む不動産のこと。 売れない実家がこれに当てはまります。買い手がつかないまま所有し続けると、 次のような費用が毎年出ていきます。

固定資産税・都市計画税
住んでいなくても毎年課税

放置で税金が最大6倍
勧告で住宅用地特例が解除

管理・保険・見回りの手間
草刈り・修繕・遠方なら交通費も

特に見落としがちなのが税金の増加リスクです。 管理が行き届かない空き家が「特定空家等」「管理不全空家等」に指定され、 自治体の勧告を受けると住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税は最大で6倍に なり得ます(出典:国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」(2026年8月時点))。 「売れないから放置」は、負担を雪だるま式に増やす最悪の一手なのです。

※実家を持ち続けた場合に年間いくらかかるかは、 実家の維持費は年間いくら?持ち続けて損する人・貸す人 で費用の内訳と試算例を紹介しています。

実家が売れない3つの理由

要点:売れない原因の多くは「立地」「価格」「状態」のどれか。原因が分かれば打ち手も決まります。

「売りに出したのに反応がない」ときは、まず原因を切り分けます。 売れない実家の理由は、たいてい次の3つに集約されます。

売れない理由よくある状況主な打ち手
① 立地郊外・田舎で買い手(実需)が少ない賃貸・空き家バンク・国庫帰属
② 価格相場より高い設定のまま反応待ち価格の見直し・複数社に査定
③ 状態築古でボロボロ・残置物が多い現状渡し・DIY可で客層を広げる

重要なのは、「売れない=価値ゼロ」ではないということ。 実需(自分で住む買い手)には向かなくても、投資家や賃貸なら回る物件は多くあります。 売り方や出口を変えるだけで、負動産が資産に戻るケースは珍しくありません。

※「立地が悪いから無理」と決めつける前に、家賃を下げてターゲットを広げる、現状渡しにする、 といった打ち手があります。ボロ物件でも入居者の窓口を広げるコツは 現状渡し・DIY可で貸す方法をご覧ください。

本題:負動産化を防ぐ5つの出口(判断フロー)

要点:「売る努力を続ける/貸す/自治体に繋ぐ/国に返す/放棄する」の5択を、上から順に検討します。

売れない実家の出口は、大きく分けて次の5つ。 いきなり「もう放棄しかない」と結論を出す前に、上から順に検討してみてください。

図解:売れない実家、5つの出口の分かれ道

売れない実家をどうする? 上から順に検討する ① まず価格・売り方を見直して「売る」を再挑戦 それでも売れない ② 賃貸需要があれば「貸して」家賃を生む 貸すのも難しい ③ 自治体の「空き家バンク」に登録して縁を探す それでも動かない ④ 土地なら「相続土地国庫帰属制度」で国に返す 要件に合わない・最終手段 ⑤ 「相続放棄」を検討(※管理義務が残る点に注意) ※放棄は他の相続財産も一切受け取れなくなる。判断は慎重に
出典:本記事オリジナル作図(検討の順番を整理したもの)

① まず価格・売り方を見直して「売る」を再挑戦する

売れない原因の多くは価格と売り方にあります。 相場より高いままなら価格を見直す、1社に任せきりなら複数社に査定を依頼する、 残置物を片づける、現状渡し可にして買い手のハードルを下げる—— これだけで反応が変わることは少なくありません。 売るか持つかで迷う場合は 築古戸建ての出口戦略|売るか持ち続けるかの判断基準 が参考になります。

なお、相続した空き家を売る場合は、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があり、 手残りが大きく変わります (相続空き家の3,000万円控除|売却時の要件と注意点)。

② 賃貸需要があれば「貸して」家賃を生む

売れなくても貸せる物件は多くあります。 維持費という「出ていくお金」を、家賃という「入ってくるお金」に反転できるのが賃貸の強みです。 築古でボロボロでも、最低限の修繕や現状渡し・DIY可という形で入居者の窓口を広げれば、 意外と入居は決まります。客付けの具体策は 築古戸建ての客付け・入居募集のコツをご覧ください。

③ 自治体の「空き家バンク」に登録して縁を探す

一般の不動産流通に乗りにくい物件でも、空き家バンクなら 「田舎暮らしがしたい」「DIYで直したい」という層に届きます。 物件の欠点を包み隠さず公開して入居率8割超を実現した自治体の事例もあり、 「汚いまま・現状のまま」でも縁が見つかることがあります。 使い方は 空き家バンクを使い倒す|買う側・貸す側の注意点 で詳しく解説しています。

④ 土地なら「相続土地国庫帰属制度」で国に返す

建物を解体して更地にできる場合、 要件を満たせば相続した土地を国に引き取ってもらえる 「相続土地国庫帰属制度」という選択肢があります (出典:政府広報オンライン「相続した土地を手放したいときの相続土地国庫帰属制度」(2026年8月時点))。

ただし、建物が建っていないこと・境界が明確なこと・担保が付いていないことなど 細かい要件があり、審査手数料と負担金もかかります。 「タダで手放せる」わけではないので、費用と手間を試算したうえで検討しましょう。

⑤ 最終手段としての「相続放棄」(※注意点あり)

どうしても引き受けたくない場合は相続放棄もありますが、注意が必要です。 放棄すると預貯金など他の相続財産も一切受け取れなくなり、原則3か月の期限もあります。 さらに、放棄しても管理義務がすぐには消えない点が誤解されがちです (現に占有していた財産は、引渡しまで保存義務が残ります)。 詳しくは 相続放棄しても管理義務は消えない?空き家の落とし穴 をご覧ください。

5つの出口を比較する

要点:手残りとスピード、手間は出口ごとに大きく違います。まずは「売る・貸す」から検討するのが基本です。

5つの出口には、それぞれ向き・不向きがあります。 自分の実家の状況(立地・状態・急ぎ度)に当てはめて選んでください。

出口向いているケース注意点
① 売る(再挑戦)価格・売り方に改善余地がある相場を確認し複数社に査定を
② 貸す周辺に賃貸・DIY需要がある最低限の修繕・客付けが必要
③ 空き家バンク田舎・築古で流通しにくい成約までは時間がかかりやすい
④ 国庫帰属更地にできる土地・売却困難要件が厳しく負担金がかかる
⑤ 相続放棄他に相続財産がなく負債が多い3か月期限・管理義務が残る

表を見てわかるとおり、手残りが期待できるのは「①売る」「②貸す」です。 ③〜⑤は「マイナスを止める」ための出口で、手放すこと自体にお金や制約が伴います。 だからこそ、いきなり放棄に飛びつかず、上から順に検討することが大切です。

今月からできること

要点:まずは「相場の把握」「相続登記の確認」「維持費の見える化」の3つから始めましょう。

ここまでできれば、「売れなくて不安」から「数字で出口を選べる」状態に変わります。 負動産は待っていても解消しません。動いた人から、負担を止められます。

まとめ

相続した実家が売れないまま放置されると、固定資産税や管理費だけが出ていく負動産になります。 勧告を受ければ税金が最大6倍になるリスクもあり、放置は最悪の選択です。

売れない実家の出口は「①売る②貸す③空き家バンク④国庫帰属⑤相続放棄」の5つ。 手残りが期待できる「売る・貸す」から順に検討し、いきなり放棄に飛びつかないことが大切です。 特に賃貸需要のある立地なら、売れない負動産を家賃を生む資産に変えられます。

相続後の全体像は 実家の空き家を相続したらどうする?放置のリスクと3つの選択肢で、 持ち続けた場合の費用は 実家の維持費は年間いくら?持ち続けて損する人・貸す人で、 格安中古物件投資の全体像は 空き家問題を「資産」に変える。格安中古物件投資入門 でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。