兄弟で相続した実家の戸建て。固定資産税を誰が払うかで揉めやすい

「兄が実家を単独で相続した。でも固定資産税の請求が来たら、弟の自分や妹にも折半で払う義務があるの?」—— お盆に兄弟が集まったあと、こうした相談が2026年8月に複数の媒体で取り上げられ、検索が増えています。

先に結論を言います。固定資産税は「その不動産の所有者(登記名義人)」に課税される税金です。 つまり実家を兄が単独名義で相続したなら、納税義務があるのは兄だけ。弟・妹に法的な分担義務はありません

ところが「共有名義」で相続していると話は逆転し、兄弟全員が税金の連帯納付義務を負います。 この記事は、相続した実家の固定資産税を①誰が払うのか → ②なぜ誤解が起きるか → ③共有名義だとどう変わるか → ④で、自分はどうすべきか → ⑤兄弟でモメないための実務 → ⑥次に読む記事の順に、初心者向けに整理します。

① 結論:固定資産税は「名義人」に課税される

このセクションの要点は「固定資産税を払う義務があるのは、その年の1月1日時点の所有者(登記名義人)だけ」ということです。

固定資産税は、土地や家屋を「持っている人」にかかる税金です。 法律(地方税法343条)でも、納税義務者は「固定資産の所有者」と定められています。 国土交通省の資料でも、固定資産税は原則として登記簿に所有者として登記されている人に課税されると示されています(2026年8月時点)。 国土交通省「固定資産税の納税義務者は所有者」資料(地方税法343条①)(PDF)を参照。

だから、遺産分割で実家を兄が単独名義で相続した場合、その固定資産税を納める義務があるのは兄だけです。 弟や妹が「実家は親のもの=みんなのもの」という感覚で折半を求められても、法律上の分担義務はありません。 逆に言えば、名義を引き受けた人がランニングコストも背負う、というのが制度の基本です。

※本記事は制度の一般的な考え方を整理したものです。個別の遺産分割の内容や課税の扱いは、物件のある市区町村の窓口や、弁護士・税理士など専門家にご確認ください。

② なぜ「兄弟で折半」の誤解が生まれるのか

このセクションの要点は「『相続=みんなの財産』という感覚と、実際の税の仕組み(名義に付く)がズレている」ことです。

多くの人が「実家は親が遺した家=兄弟みんなのもの」と感じます。 その感覚のまま「税金だって兄弟で分けるのが公平では」と考えると、折半義務があるように思えてしまいます。 ですが税金は『気持ち』ではなく『名義』に付くため、単独名義にした時点で納税義務は名義人ひとりに集約されます。

もう一つの誤解の元が「相続登記をしていない(名義が親のまま)」状態です。 2024年から相続登記は義務化されており、名義を放置していると、市区町村は「相続人の代表者」に納税通知を送ります。 この代表者宛の通知を見て「自分に請求が来た=自分が払う義務がある」と早合点しがちですが、誰が最終的に負担するかは遺産分割で名義をどう決めるか次第です。

「誰が払うか」は名義の決め方で変わる

1
親が死亡
(名義は親のまま)
2
遺産分割で
名義を決める
3A
単独名義
=名義人が全額
3B
共有名義
=全員が連帯納付

③ 共有名義で相続すると全員に「連帯納付義務」

このセクションの要点は「『とりあえず兄弟で共有』にすると、全員が固定資産税の連帯納付義務を負う」ことです。

遺産分割でモメて「決着がつかないから、とりあえず兄弟3人の共有名義にしておこう」という選択をする人がいます。 ここが落とし穴です。共有名義にすると、共有者全員が固定資産税の「連帯納付義務」を負います(地方税法10条の2)。

連帯納付義務とは、市区町村は共有者の誰に対しても税額の全額を請求できるという仕組みです。 「自分は持分3分の1だから3分の1だけ払えばいい」とはならず、他の共有者が払わなければあなた一人に全額の請求が来ることもあるのです。 共有は一見「平等」に見えて、税金の面ではむしろリスクが増えます。

相続後の名義 納税義務がある人 兄弟の分担義務
兄が単独名義で相続兄だけ弟・妹に法的義務なし
兄弟3人の共有名義共有者全員全員が連帯納付義務
名義が親のまま(未登記)相続人全員(代表者に通知)実質は相続人全員で負担

共有名義は税金だけでなく、将来売る・貸す・解体するときに全員の同意が必要になり、意思決定が固まらなくなる問題も抱えます。 共有のこわさは実家の空き家を相続したら?放置のリスクと3つの選択肢でも整理しています。

相続した築古戸建て。共有名義にすると売却や解体で全員の同意が必要になる

④ で、自分はどうすればいいか(立場別)

このセクションの要点は「『名義を誰にするか』と『負担を誰がするか』を、感情ではなく事実で切り分けて動く」ことです。

「折半義務がない」と分かっても、現実には兄弟の関係があります。立場ごとに、今やるべきことを整理します。

実家を持ち続けたときに毎年いくらかかるかは実家の維持費は年間いくら?持ち続けて損する人・貸す人に、 使い道が決まらず売りたい人は相続した実家が売れないどうする?負動産化を防ぐ出口5つにまとめています。

なお、実家を空き家のまま放置すると、固定資産税が上がる別のリスク(勧告による住宅用地特例の除外=最大6倍)もあります。 「誰が払うか」だけでなく「放置で税が増えないか」も要チェックです。詳しくは 空き家を持ち続けると税金が上がる?6倍化と空き家税の総まとめを参照してください。

⑤ 兄弟でモメないための実務3つ

このセクションの要点は「法律上の義務と、家族としての負担の話し合いは別。決めたことは必ず書面に残す」ことです。

「折半義務はない」は正論ですが、それだけを振りかざすと関係が壊れます。 実家を引き受ける人が一方的に損をしないよう、次の3つを押さえておきましょう。

やりがちな失敗 なぜ危険か
「決まらないから」と兄弟の共有名義にする全員が連帯納付義務を負い、売却・解体も全員同意が必要になる
負担の取り決めを口約束で済ませる後から「聞いていない」となり、実家を持つ人だけが負担を抱える
相続登記を先延ばしにする登記義務化で過料の対象になりうるうえ、代表者に納税通知が集中する
折半義務がないことだけを主張して押し切る法的には正しくても、家族関係が壊れ将来の協力が得られなくなる

そもそも実家を「誰も取りたがらない」なら、相続放棄という選択肢もあります。ただし放棄には期限と管理義務の注意点があります。判断材料は 空き家の相続放棄は危険?残る管理義務と手放す前の選択肢を確認してください。

⑥ 次に読むべき記事

単独相続した実家の固定資産税は、名義人が払うのが原則で、他の兄弟に法的な折半義務はありません。 ただし共有名義にすると全員が連帯納付義務を負うため、名義の決め方は慎重に。負担のルールは遺産分割の中で決め、必ず書面に残しましょう。

まとめ

固定資産税は不動産の所有者(登記名義人)に課税される税金です(地方税法343条・2026年8月時点)。 実家を兄が単独名義で相続したなら、納税義務は兄だけ。弟・妹に折半義務はありません

一方で共有名義にすると全員が連帯納付義務を負い、税額の全額を一人に請求されることもあります。 「決まらないから共有」は将来の火種になりやすいので避けましょう。

大切なのは、誰が名義を持ち、誰がコストを負担するかを遺産分割の中で決め、書面に残すことです。 法的な義務と家族の話し合いを切り分ければ、税でモメずに実家の出口を落ち着いて選べます。