相続した築古の実家。リフォームして売るか現況で売るか迷う場面

相続した実家を売ろうとすると、必ずぶつかるのが「直してから売るべきか、このまま売るべきか」という分かれ道です。

不動産会社に相談すると「リフォームすれば高く売れますよ」と言われ、一方で「古家付きのまま売った方がいい」という話も聞く。どちらも一理あるので、余計に迷ってしまいます。

この記事は、そのモヤモヤを「自分はどちらを選ぶべきか」まで落とし込むための意思決定マップです。損得の考え方 → 向き不向きの判断 → 現況で売る手段 → 費用の抑え方 → 税金の期限、の順に、関連する記事へも案内します。

結論:多くの実家は「フルリフォームしてから」は損

このセクションの要点:売る目的なら、自腹のフルリフォームは回収できないことが多い。まずは現況・最小限で比べます。

先に結論を3点でまとめます。

※本記事は一般的な情報提供であり、個別の不動産・税務の助言ではありません。売却価格や費用は物件の状態・立地・時期で大きく変わります。実際の判断は不動産会社や税理士にご確認ください。

「300万かけて500万高く」は成り立つのか

このセクションの要点:カギは「リフォーム費用<値上がり幅」になるか。多くの築古では、この不等号が逆になります。

「リフォームしてから売る」が得になるのは、かけた費用より、売値の上がり幅の方が大きいときだけです。式にするとシンプルです。

図解:リフォームしてから売る損得の分かれ目

売値の 上がり幅 リフォーム 費用 = プラスなら得 マイナスなら損
出典:損得の考え方を単純化して作成(2026年9月時点)。実際の値上がり幅は物件・地域で異なります。

たとえば300万円かけて、売値が500万円上がるなら差引プラス200万円で得です。問題は、築古の実家でこの「値上がり500万円」が実際に出るのかという点にあります。

現実には、リフォーム済みでも買い手が「自分好みに直したい」と考えると、かけた費用ぶんの上乗せを評価してくれないことが多いのです。むしろ、安く買って自分でリフォームしたい層(実需のDIY派・投資家)を、価格が上がったことで逃す逆効果も起こります。

築古のリフォーム費用そのものが2026年は資材高騰で上ぶれしやすく、想定より膨らむリスクもあります。費用の相場観は 築古リフォーム費用が高い2026|資材高騰でも予算を抑える順番 にまとめました。「かける費用は読みやすいが、上がる売値は読みにくい」——この非対称が、フルリフォームが損になりやすい理由です。

リフォーム前の築古戸建ての室内。どこまで直すかで費用が変わる

自分の実家はどっち向き?判断チェック

このセクションの要点:物件の状態・立地・買い手層で向きが変わります。当てはまる方に寄せて考えます。

どちらが正解かは物件で変わります。次の表で自分の実家がどちらに寄っているかを確認してください。

見るポイント 現況で売る向き 直してから売る向き
買い手の層投資家・DIY実需が多い地域そのまま住みたい実需が中心
建物の状態傷みが大きい・耐震に不安大きな欠陥はなく設備の古さ程度
立地・需要相場が安く上乗せが乗りにくい需要が厚くきれいなら早く高く売れる
自分の資金持ち出しを避けたい回収の見込みが立つ余裕資金がある

迷ったらまず「現況で売ったらいくらか」を不動産会社に査定してもらうのが近道です。そのうえで「最低限直したらいくら上がるか」を同じ会社に聞けば、直す価値があるかを金額で比べられます。

なお、耐震に不安がある・傷みが激しい実家は、無理に直すより現況で売る判断が無難です。買い手にとってもリスクが読みにくく、直す費用がかさむわりに評価されにくいためです。売れずに「負動産」化させないための出口全体は 相続した実家が売れないどうする?負動産化を防ぐ出口5つ で整理しています。

現況で売る3つの出口

このセクションの要点:「直さず売る」にも種類があります。手取りとスピードのバランスで選びます。

「直さない=売れない」ではありません。築古の実家を現況のまま売る方法は主に3つあります。

それぞれの使い分け(手取り重視なら仲介+古家付き、スピード重視なら買取、など)は 空き家は解体せず売れる|古家付き・現況渡し・買取の使い分け に詳しくまとめました。「解体してから」も、実は住宅用地特例が外れて固定資産税が上がるうえ解体費もかかるため、急いで更地にするのは要注意です。

直すなら費用を抑える順番

このセクションの要点:直すと決めても“フル”は避ける。買い手のマイナスを消す部分補修が費用対効果の中心です。

判断チェックで「直してから売る向き」だった場合も、フルリフォームは基本しません。売却のためのリフォームは、買い手が引く決定的なマイナスを消すことに絞るのが鉄則です。

「どこまで直すのが正解か」という線引きの考え方は ボロ戸建てのリフォーム費用の考え方|どこまで直すのが正解か が参考になります。売却でも投資でも、「全部きれいにする」ではなく「マイナスを消す」という発想は同じです。

見落としがちな税金の期限(3年)

このセクションの要点:相続した空き家の売却には、税優遇の“期限”があります。直すか迷ううちに過ぎると数百万円損することも。

リフォームするか迷って時間をかけているうちに、使えたはずの税優遇の期限を逃す——これが一番もったいない失敗です。

相続した実家(空き家)を売って一定の要件を満たすと、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例があります。この特例は「相続の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売ることが条件です (出典:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例・2026年9月時点)。

期限の数え方や要件(昭和56年5月31日以前の建物であること、一定の耐震基準など)は 相続した空き家を売るなら3年以内|3000万円控除の期限の数え方 で詳しく解説しています。「直すか売るか」で迷う前に、まず自分の期限がいつまでかを確認しておくと、判断に締め切りができて動きやすくなります。

今月やること

このセクションの要点:査定と期限確認を先に。数字が出てから、直すか現況かを比べます。

※税の特例は要件・期限が細かく、適用の可否は個別事情で変わります。必ず国税庁の案内や税理士でご確認ください。

次に読むべき記事

このセクションの要点:「現況で売る手段 → 費用 → 税の期限 → 売れない時の出口」の順で読むと、実家売却の地図がそろいます。

まとめ

相続した実家は、「リフォームしてから売る」より「現況を基準に比べる」のが失敗しにくい順番です。 得になるのは「かけた費用<上がる売値」が成り立つときだけで、築古ではこの不等号が逆になりやすいからです。

直すと決めてもフルではなく“売れる最低限”に絞る。そして3,000万円控除の3年期限を先に確認して、迷う時間で優遇を逃さないこと (出典:国税庁 No.3306・2026年9月時点)。 この順番で査定と見積りを並べれば、「直すか現況か」を金額で冷静に決められます

「売るより、直して家賃を生ませる道もあるのでは」と思ったら、格安の築古を収益物件に変える基本を 空き家投資の始め方|格安中古物件投資入門ガイド で解説しています。売却・賃貸・保有を同じ土俵で比べると、実家の出口がもう一段見えてきます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の不動産・税務・法務上の助言ではありません。 売却価格・費用・税の適用は、必ず不動産会社や税理士・司法書士など専門家にご確認ください。