誰も住まなくなった郊外の一戸建て。相続した実家の維持費を考えるイメージ

「使う予定のない実家を相続したけれど、持っているだけで毎年お金が出ていく」—— 2026年7月末、西日本新聞やファイナンシャル系メディアが 「実家の維持費は年いくらまで許せるか」という特集を相次いで報じ、 あらためて注目を集めています。

西日本新聞のアンケートでは、維持費の許容額は 「年5万〜10万円以下」が最多でした。ところが実際に持ち続けると、 固定資産税や保険料などでその数倍かかるケースも珍しくありません (出典:西日本新聞「実家の維持費いくらまで?」(2026年7月時点))。

この記事では、ニュースの紹介はここまでにして、 「で、自分の実家はどうすればいいのか」に大半を割きます。 維持費の内訳と試算、放置で税金が跳ね上がる仕組み、そして 売る・貸す・持つの判断基準まで、初心者の方にもわかるように整理します。

実家を持ち続けると年間いくら?費用の内訳

要点:住んでいなくても、固定資産税・都市計画税・火災保険・管理費は毎年かかり続けます。

実家を使っていなくても、所有している限り毎年かかる費用があります。 「空き家だから安いだろう」と思われがちですが、実際は次のような固定費が 積み上がっていきます。

費用の種類目安・考え方
固定資産税土地・建物の課税標準額 × 標準税率1.4%(地方税法上の標準税率)
都市計画税市街化区域内なら課税標準額 × 最大0.3%が上乗せ
火災保険・地震保険空き家は保険料が割高になりやすい。数万円/年〜
管理・その他草刈り・見回り・水道光熱の基本料・修繕など

各メディアの試算では、これらを合計すると 年間30万円前後になる例も紹介されています (出典:西日本新聞(2026年7月時点))。 「年5万〜10万円まで」という感覚と、現実の負担には大きな開きがあるわけです。

※金額は物件の立地・評価額・保険内容によって大きく異なります。固定資産税・都市計画税の 正確な額は、毎年春に届く「固定資産税・都市計画税 納税通知書」で確認できます。

図解:使わない実家の年間維持費(試算例)

要点:数字はあくまで説明用の仮定ですが、「固定費の塊」であることが直感的につかめます。

イメージをつかむために、地方の築古戸建てを想定した試算例を図にしてみます。 下の数字は実在の物件ではなく、内訳を理解するための仮の例です。

図解:使わない実家の年間維持費(試算例)

固定資産税 約10万円 都市計画税 約2万円 火災・地震保険 約5万円 管理・その他 約8万円 合計 約25万円/年 10年持てば約250万円
数値は内訳を説明するための仮定です。実際の金額は物件ごとに大きく異なります。

ポイントは、これが「毎年」出ていく固定費だということです。 仮に年25万円なら、10年放置すれば約250万円。何も生み出さないまま、 これだけのお金が消えていく計算になります。 だからこそ「持ち続けるか、活用するか」を早めに決めることが大切です。

※固定資産税・都市計画税・火災保険料のより詳しい目安は、 築古戸建て投資の税金・経費まとめ|固定資産税はいくら? でも解説しています。

放置するとさらに増える|税金が最大6倍になる仕組み

要点:管理が行き届かない空き家は住宅用地特例が外れ、固定資産税が最大6倍になり得ます。

「使わないなら、とりあえず放っておこう」——これが一番危険です。 住宅が建っている土地には、固定資産税を軽減する「住宅用地特例」が 適用されています。ところが空き家対策特別措置法にもとづき、 倒壊のおそれなどがある空き家が「特定空家等」「管理不全空家等」に指定され、 自治体の勧告を受けると、この特例が解除されます。

その結果、土地の固定資産税は最大で6倍に跳ね上がる可能性があります (出典:国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」(2026年7月時点))。 放置すればするほど、維持費は「減る」どころか「増える」方向に動くのです。

放置で税金が最大6倍
勧告で住宅用地特例が解除

相続登記も期限あり
義務化・過料10万円のリスク

毎年出ていく固定費
何も生まないコストが積み上がる

※相続した実家は、2024年4月から相続登記が義務化されています(正当な理由なく怠ると 10万円以下の過料の対象)。名義や放置リスクの詳細は 実家の空き家を相続したらどうする?放置のリスクと3つの選択肢 をご覧ください。

本題:で、自分はどうすればいい?3つの選択肢

要点:「売る・貸す・持つ」の3択を、立地と自己資金で切り分けるのが基本です。

維持費が固定費として出ていくとわかったら、次は行動です。 使わない実家の出口は、大きく分けて次の3つ。順番に判断していきましょう。

図解:使わない実家、3つの選択肢の分かれ道

自分や家族が 使う予定はあるか? NO(使わない) 立地に賃貸・DIY需要は あるか? YES NO 貸す 家賃を生む資産に変える 売る 現金化して固定費を止める 迷ったら、費用と手残りを 試算してから専門家に相談
出典:本記事オリジナル作図(判断の考え方を整理したもの)

① 貸す:家賃を生む資産に変える

一定の賃貸需要がある立地なら、貸して家賃を得るのが有力です。 維持費という「出ていくお金」を、家賃という「入ってくるお金」に反転させられます。 築古でボロボロでも、最低限の修繕、あるいは 現状渡し・DIY可という形で 入居者の窓口を広げれば、意外と入居は決まります。 客付けの具体策は 築古戸建ての客付け・入居募集のコツ をご覧ください。

② 売る:現金化して固定費を止める

賃貸需要が乏しい立地や、修繕にお金をかけたくない場合は売却です。 売れば、その時点で維持費という固定費が止まります。 相続した空き家を売る場合は、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を 控除できる特例があり、手残りが大きく変わります (相続空き家の3,000万円控除|売却時の要件と注意点)。 売るか持つかで迷う場合は 築古戸建ての出口戦略|売るか持ち続けるかの判断基準 が参考になります。

③ 持つ:使う予定がある場合だけ

「数年以内に自分や子どもが住む」「セカンドハウスとして使う」など、 明確な利用予定がある場合に限って、持ち続ける選択が合理的です。 予定がないのに「なんとなく」持ち続けるのは、 前述のとおり毎年固定費を垂れ流すだけになりがちです。

持ち続けて損する人・貸して得する人

要点:判断の分かれ目は「利用予定の有無」と「立地の賃貸需要」の2つです。

同じ実家でも、状況によって「持つのが損」になる人と「貸すと得」になる人がいます。 自分がどちらに近いか、あてはめてみてください。

タイプ状況の特徴向いている選択
持ち続けて損しやすい人利用予定なし・空き家のまま・草刈りにも通えない売却 or 賃貸で固定費を止める
貸して得しやすい人周辺に賃貸/DIY需要あり・最低限の修繕は許容できる貸して家賃を生む
持ってよい人数年内に自分・家族が使う予定が明確持ち続ける(それまでの管理は必須)

※「立地が悪いから貸せない」と決めつける前に、家賃を下げてターゲットを広げる、 現状渡しにする、といった打ち手があります。あきらめる前に一度、収支を試算してみることをおすすめします。

今月からできること

要点:まずは「維持費の実額を出す」「相続登記を確認する」の2つから始めましょう。

ここまでできれば、「なんとなく不安」から「数字で判断できる」状態に変わります。 維持費は待っていても減りません。動いた人から、負担を止められます。

まとめ

使わない実家を持ち続けると、固定資産税・都市計画税・火災保険・管理費で 毎年まとまった固定費がかかり続けます。放置して勧告を受ければ、 住宅用地特例が外れて固定資産税が最大6倍になるリスクもあります。

大切なのは、「売る・貸す・持つ」を立地と利用予定で切り分けること。 特に賃貸需要のある立地なら、維持費という出費を家賃という収入に変えられます。 まずは維持費の実額を出すところから始めてみてください。

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