「格安の戸建てを探すなら、自治体がやっている『空き家バンク』を使えばいいのでは?」—— そう考えてホームページを覗いたことがある方は多いのではないでしょうか。 相場よりかなり安い掘り出し物件が載っていることもあり、初心者にとって 魅力的な入口に見えます。
ただし、空き家バンクには「自治体は情報の橋渡しまでしか行わない」という、 意外と知られていない仕組み上の注意点があります。仕組みを理解せずに 利用すると、思わぬトラブルに発展することもあるのです。
物件探しの基本ルートである不動産ポータルサイトと未公開物件については ボロ戸建ての探し方|格安中古物件はどこで見つかる? で解説していますが、この記事ではもう一つの入口である「空き家バンク」に絞って、 仕組み・メリット・デメリット・失敗しない使い方を初心者向けに解説します。
空き家バンクとは?全国版の仕組みと実績
空き家バンクとは、市区町村などの自治体が、空き家の所有者から物件情報の登録を募り、 購入・賃貸を希望する人に向けてホームページなどで情報提供する制度です。 多くの場合、地元の不動産業者があまり扱いたがらないような、 郊外や過疎地域の古い戸建てが多く登録されています。
2018年4月には、複数の自治体の空き家バンクを一つのサイトで横断検索できる 「全国版空き家・空き地バンク」の本格運用が始まりました。運営を担うのは 株式会社LIFULLとアットホーム株式会社の2社です (出典:国土交通省「『全国版空き家・空き地バンク』を高機能化し、4月から本格運用を開始!!」)。
国土交通省の発表によると、2019年3月時点で全国603の自治体が参画し、 掲載物件数は延べ9,000件以上、累計の成約件数は1,900件を超えています (出典:国土交通省「『全国版空き家・空き地バンク』の更なる情報の充実化!」)。 その後も参画自治体は増え続けており、決して一部の物好きだけが使う マイナーな仕組みではありません。
図解:全国版空き家・空き地バンクの実績(2019年3月時点)
空き家バンクを使う3つのメリット
空き家バンクには、他の探し方にはない独自のメリットがあります。
- 相場よりかなり安い掘り出し物件に出会える可能性がある:登録する所有者は「早く手放したい」という事情を抱えていることが多く、価格交渉に応じてもらいやすい傾向があります。
- 自治体が間に入っているという安心感:登録前に所有者確認や簡単な現地確認を行っている自治体もあり、まったくの野良情報よりは信頼できる入口になります。
- 登録物件向けの改修補助金が用意されている自治体がある:たとえば山梨県北杜市では空き家バンク登録者向けのリフォーム補助金(上限100万円)が、岡山市では50万円以上のリフォーム工事に対して補助率3分の1・上限50万円の補助金が用意されています(出典:北杜市「空き家バンク活用促進リフォーム補助金について」)。
見落としがちな3つのデメリット・注意点
一方で、空き家バンクの仕組みには、初心者が見落としがちな注意点もあります。 特に重要なのが「自治体は宅地建物取引業の免許を持っていない」という点です。
図解:自治体の役割は「情報の橋渡し」まで
- 個人間売買になりやすく、トラブルの元になる:自治体は宅建業の免許を持たないため、物件情報の公開までが役割で、交渉・契約は売主・買主の当事者間で進めることが基本になります。専門家を介さない話し合いでは、価格交渉や契約条件で折り合いがつかずトラブルに発展することも少なくありません(出典:ネクスパート法律事務所「空き家バンクとは?利用するメリットとリスクについて解説」)。
- 契約不適合責任が曖昧になりやすい:宅建業者を介さない場合、重要事項説明が行われないケースもあり、購入後に「聞いていなかった雨漏りやシロアリ被害」が見つかっても、修繕費や損害賠償を巡ってトラブルになる恐れがあります(出典:訳あり物件買取プロ「空き家バンクの6つの失敗例」)。
- 改修補助金には細かい制約がある:前述の北杜市・岡山市の例のように、多くの補助金は「工事着工前の申請が必須」「予算の範囲内・先着順」「対象工事や業者が限定される」といった条件がつきます。良い物件が見つかっても、補助金の申請が間に合わず自己資金だけでリフォームすることになる可能性も考えておく必要があります。
※空き家バンクの運用方法(宅建業者の関与の有無、補助金の内容など)は自治体によって異なります。 利用を検討する際は、必ず該当する自治体の窓口で最新の情報をご確認ください。
失敗しないための使い方4カ条
空き家バンクを使うこと自体が悪いわけではありません。仕組みを理解した上で、 次の4つを意識するだけでトラブルの多くは避けられます。
- 必ず現地に足を運ぶ:写真だけでは雨漏り・シロアリ・柱の腐食といった「隠れた欠陥」は見抜けません。空き家期間が長い物件ほど、水道管の劣化や給湯器の故障などを想定して、修繕費を多めに見積もっておくと安心です。
- 契約前に専門家を挟む:個人間売買であっても、司法書士や宅建士に契約書の作成・確認を依頼できます。トラブル防止のために提携の不動産会社を紹介してくれる自治体もあるため、窓口で相談してみましょう。
- 価格の安さだけで判断しない:物件価格が安くても、リフォーム費用を含めた総投資額で利回りを計算しないと、想定していた収益は得られません。利回りの計算方法は築古戸建ての利回り計算方法|表面利回りと実質利回りの違いで解説しています。
- 補助金はあくまで「使えたらラッキー」程度に考える:申請条件を満たせず補助金が使えなかった場合でも、事業計画が成り立つかどうかを事前に確認しておきましょう。
ボロリッチの仕入れルートとの違い
空き家バンクは、誰でもインターネット経由でアクセスできる「一般公開」の情報源です。 一方で、私たちが実際に仕入れている物件のうち、一般に公開されていない 「未公開物件」は9割近くを占めています。誰でも見られる情報源である以上、 条件の良い掘り出し物件ほど競争率が高くなりやすいという点は、 空き家バンクにもある程度当てはまります。
とはいえ、空き家バンクが物件探しの選択肢として無価値というわけではありません。 「入口の一つ」として活用しつつ、仕入れから契約、リフォーム、客付けまでを 伴走してくれる専門家のサポートを受けることで、個人間売買特有のリスクを 大きく減らすことができます。
| 探し方 | 価格帯の傾向 | 確認のしやすさ |
|---|---|---|
| 空き家バンク | 相場より安いことが多い | 個人間交渉になりやすく手薄 |
| 不動産ポータルサイト | 相場に近い・競争率が高い | 宅建業者が仲介するため一定水準 |
| 未公開物件(業者紹介) | 相場より安い掘り出し物が多い | 業者が事前に目利き済み |
物件探しのルート全般については ボロ戸建ての探し方|格安中古物件はどこで見つかる? で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。契約前に確認すべき チェックポイントは 買ってはいけない築古戸建てチェックリスト|プロが見るポイント にまとめています。
まとめ
空き家バンクは、相場より安い掘り出し物件に出会える可能性がある一方、 自治体は物件情報の橋渡しまでしか行わず、契約は個人間になりやすいという 仕組み上の注意点があります。契約不適合責任が曖昧になりやすい点も 見落とせません。
現地確認を怠らないこと、契約前に専門家を挟むこと、価格の安さだけで 判断せず総投資額で利回りを見ること——この4カ条を押さえれば、 空き家バンクも有力な物件探しの選択肢になります。
格安中古物件投資の基本的な考え方は 空き家問題を「資産」に変える。格安中古物件投資入門 で解説しています。物件探しの他のルートは ボロ戸建ての探し方|格安中古物件はどこで見つかる? で、契約前に確認すべきポイントは 買ってはいけない築古戸建てチェックリスト|プロが見るポイント で、利回りの計算方法は 築古戸建ての利回り計算方法|表面利回りと実質利回りの違い で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。