親が施設に入り誰も住まなくなった実家の戸建て。放置すると固定資産税が上がるリスクがある

「一人暮らしの親が施設に入って、実家に誰も住まなくなった。住んでいないのに、固定資産税は前と同じ、いや6倍になるって本当?」—— お盆に実家へ帰った人から、こうした相談が急に増えています。

結論から言うと、親が施設に入って空き家になっただけでは、固定資産税はいきなり6倍にはなりません。 建物が建っていれば税を軽くする仕組みは続きます。ただし放置して行政から「勧告」を受けると、その仕組みが外れて最大6倍になる、という落とし穴があります。

この記事は、親の施設入居で実家が空き家になった人に向けて、 ①何が起きているか → ②なぜ「6倍」の誤解が生まれるか → ③自分は対象か → ④売るなら3000万円控除が使えるか → ⑤いつまでに何をするか → ⑥次に読む記事 という意思決定の順に整理した「まとめ(ハブ)」です。

① 何が起きているか:施設入居で実家は一気に空き家になる

このセクションの要点は「親の施設入居や入院は、実家が空き家になる最も多いきっかけだ」ということです。

高齢の親が一人で暮らしていた実家は、親が施設に入った瞬間から誰も住まない家になります。 家財も残ったまま、郵便物だけがたまっていく——お盆に帰省して初めて「これ、どうしよう」と気づく人が多いのです。

空き家になると、真っ先に気になるのが固定資産税です。 「住んでいないのに毎年払い続けるの?」「放置すると6倍になると聞いた」——ここで多くの人が誤解をします。 まずは仕組みを正しく押さえましょう。

② なぜ「固定資産税6倍」の誤解が生まれるか

このセクションの要点は「住む・住まないは関係ない。建物が建っていれば税の軽減は続く。外れるのは『勧告』を受けたときだけ」ということです。

住宅が建っている土地には、固定資産税を軽くする「住宅用地特例」があります。 これは人が住んでいるかどうかではなく、住宅(建物)が建っているかどうかで決まります。 つまり、親が施設に入って空き家になっても、家が建っている限り軽減は続き、税額は基本的に変わりません。

では、なぜ「6倍」という話が出るのか。それは空き家を放置して行政から勧告を受けると、この住宅用地特例が外れるからです。 国土交通省も、管理不全空家・特定空家として勧告した土地は住宅用地特例の対象から除外されると示しています(2026年8月時点)。 国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」(PDF)を参照。

「空き家=すぐ6倍」ではない。6倍になる流れ

1
施設入居で
空き家に(税は変わらず)
2
放置・管理不全
(助言・指導)
3
是正されず
「勧告」
4
住宅用地特例が外れ
最大6倍に

重要なのは、いきなり6倍になるのではなく「助言・指導 → 勧告」という段階を踏む点です。 勧告の前にきちんと片づけたり管理したりすれば、軽減は外れません。詳しい全体像は 空き家を持ち続けると税金が上がる?6倍化と空き家税の総まとめ にまとめています。

※固定資産税の金額や軽減の適用は、自治体・物件によって異なります。具体的な税額や勧告の状況は、物件のある市区町村の担当窓口でご確認ください。本記事は制度の一般的な考え方を整理したもので、個別の税額を保証するものではありません。

長く手入れされていない空き家の様子。管理不全のまま勧告を受けると税の軽減が外れる

③ 自分は6倍の対象か:勧告と1月1日がカギ

このセクションの要点は「『勧告を受けているか』と『1月1日時点でどうか』の2点で決まる」ということです。

自分の実家が6倍の対象になりそうかは、次の表で見当がつきます。あくまで目安で、最終的な判断は自治体が行います。

実家の状態 住宅用地特例 税の目安
建物があり、管理されている続くこれまでどおり
空き家だが助言・指導の段階まだ続くこれまでどおり
勧告を受けたまま是正しない外れる最大6倍に上がりうる
建物を解体して更地にしたそもそも対象外更地扱いで上がりうる

もう一つのカギが「1月1日」です。固定資産税は毎年1月1日時点の状態で1年分が決まります。 裏を返せば、勧告を受けても年内(12月31日まで)にきちんと是正すれば、翌年の軽減は維持できる可能性があります。 「まだ片づけていないだけ」で年を越すのが一番もったいないパターンです。制度の根拠は 国土交通省「空家等対策特別措置法 関連情報」(2026年8月時点)で確認できます。

「解体して更地にすれば安心」と早合点しないことも大切です。更地にすると住宅用地特例そのものがなくなり、かえって税が上がることがあります。 解体するかどうかは、売る・貸すの出口とセットで考えましょう。判断材料は 空き家の解体費用相場|補助金と「解体しない」という選択肢 が参考になります。

④ 売るなら:相続空き家の3000万円控除は使えるか

このセクションの要点は「親が老人ホーム等に入っていたケースでも、要件を満たせば売却益から3000万円まで控除できる」ということです。

実家を持ち続けず売る決断をした場合、相続した空き家を売ったときに使えるのが 「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3000万円特別控除」です。 売却で出た利益(譲渡所得)から最大3000万円を差し引ける、大きな制度です。

ポイントは、親が亡くなる直前に自宅ではなく老人ホーム等に入居していた場合でも、一定の要件を満たせば対象になりうることです。 要件は細かく、たとえば「要介護認定などを受けて入居していたこと」「自宅を貸したり事業に使ったりしていないこと」などが問われます。 詳細と最新の要件は必ず 国税庁 タックスアンサー No.3306(被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)(2026年8月時点)で確認してください。

この控除は適用期限や、耐震改修または取り壊してから売るなどの条件があり、準備に時間がかかります。 「売ると決めたら早めに動く」のが鉄則です。控除の中身と落とし穴は 相続空き家の3,000万円控除|売却時の要件と注意点 にまとめています。売却そのもので詰まりやすい人は 相続した実家が売れないどうする?負動産化を防ぐ出口5つ もあわせて読んでください。

なお、親が認知症などで判断能力が下がってからだと、本人名義のままでは売れず、成年後見や家庭裁判所の許可が必要になり、手続きが一気に重くなります。 親が元気なうちにできる備えは 認知症の親の実家が売れない|成年後見と家裁の許可・今できる対策 が参考になります。

⑤ いつまでに何をするか:今月やることリスト

このセクションの要点は「『放置しない』ことがすべて。持つ・貸す・売るを決める前に、まず管理の手を打つ」ことです。

親の施設入居で実家が空き家になったら、まず次の順で手を打ちます。急いで結論を出す必要はありませんが、放置だけは避けましょう。

遠方で自分では通えない場合は、管理を外部に頼む選択肢もあります。放置リスクと費用相場は 遠方の空き家管理はどうする?放置リスクと費用相場まとめ に、持ち続けたときの年間コストは 実家の維持費は年間いくら?持ち続けて損する人・貸す人 にまとめています。

やりがちな失敗 なぜ危険か
「住んでないから6倍」と思い込み慌てて解体更地にすると住宅用地特例が消え、逆に税が上がることがある
管理せず放置して勧告を受ける住宅用地特例が外れ、最大6倍に上がりうる
売却の準備を先延ばしにする3000万円控除には期限があり、間に合わないと数百万円単位で損をしうる
親が判断できなくなってから動く本人名義で売れず、後見・家裁の許可で手続きが重くなる

勧告が進んで最悪の場合に何が起きるかを知っておくと、放置の怖さが実感できます。 特定空家の行政代執行とは|費用は誰が負担・される前の対策 も一度目を通しておくと安心です。

⑥ 次に読むべき記事

親の施設入居で実家が空き家になっても、すぐ6倍になるわけではありません。 怖いのは「勧告されるまで放置すること」。管理の手を打ち、持つ・貸す・売るを落ち着いて決めれば、税で損をせずに済みます。

まとめ

親が施設に入って実家が空き家になっても、建物が建っていれば住宅用地特例は続き、固定資産税はいきなり6倍にはなりません(2026年8月時点)。

6倍になるのは放置して「勧告」を受け、特例が外れたときだけ。固定資産税は1月1日時点で決まるので、年内に是正すれば軽減を守れます

売る決断をしたなら、相続空き家の3000万円控除が使えるかを早めに確認しましょう。慌てて解体せず、管理→方向決め→要件確認の順で、落ち着いて動くのが正解です。