重機が入った古い木造家屋の解体現場。空き家の解体費用を考えるイメージ

「実家の空き家、もう何年も放置している。いっそ解体してしまおうか」。 私はこの相談を受けるたびに、まず「本当に解体が必要か」を一緒に考えるようにしています。

結論から言います。木造住宅の解体費用は坪3万〜5万円が相場で、 30坪ならおよそ80万〜150万円かかります。 しかも解体して更地にすると、固定資産税の軽減措置が外れ、 税負担が最大6倍に跳ね上がることさえあるのです。

この記事では、空き家解体費用の相場と使える補助金制度、そして私たちボロリッチが 実践している「解体しない」という選択肢まで解説します。放置した場合のリスクや 売却・賃貸という選択肢については 実家の空き家を相続したらどうする?放置のリスクと3つの選択肢 でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

なぜ「空き家は解体すべき」と思ってしまうのか

総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」によると、日本全国の空き家数は約849万戸 (出典:総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」)。 老朽化した空き家を放置していると、「空家等対策の推進に関する特別措置法」にもとづき、 自治体から「特定空家等」に指定され、除却(解体)の勧告や命令を受けることがあります (出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」)。

「指定されたら怖い」「近所に迷惑をかけたくない」——こうした不安から、 多くの方が「とりあえず解体しておこう」と考えます。 その気持ちはよくわかります。ただし解体は一度実行すると後戻りできません。 まずは費用感を正しく知ることが先決です。

空き家解体費用の相場【構造別】

解体費用は建物の構造によって、坪単価が大きく変わります。 木造住宅であれば坪3万〜5万円、鉄骨造は坪5万〜7万円、RC(鉄筋コンクリート)造は 坪6万〜8万円が目安です (出典:NPO法人空家・空地管理センター「空き家の解体費用はどれくらい?」)。 築古戸建て投資で扱うことの多い木造住宅であれば、 30坪の総費用は80万〜150万円が目安と考えておくとよいでしょう。

図解:構造別・解体費用の坪単価の目安

3〜5万円 5〜7万円 6〜8万円 木造 鉄骨造 RC造 (坪単価の目安)
出典:NPO法人空家・空地管理センターの情報をもとに作成した目安

※解体費用は建物の状態・立地・工事条件によって変動します。実際の金額は 解体業者による現地調査・見積もりを必ずご確認ください。

解体費用が高くなる4つの要因

同じ坪数・構造でも、次のような条件があると解体費用は数十万円単位で上振れします。 見積もりを取る前に、自分の物件が当てはまらないか確認しておきましょう。

接道条件が悪い
重機が入れず手作業が増える

残置物が多い
家財の処分費用が別途かかる

アスベスト含有
専門業者による除去費用が上乗せ

都市部の物件
作業環境の制約で割高になりやすい

特に「残置物が多い」は見落としがちなポイントです。相続した実家には、 先代が長年溜め込んだ家財が残っていることが多く、これらの処分費用が 解体費用とは別に数十万円かかるケースも珍しくありません。

空き家解体で使える補助金制度

解体費用の負担を軽減する手段として、多くの自治体が「老朽危険空き家解体補助金」 のような制度を用意しています。国土交通省も「空き家再生等推進事業」を通じて、 不良住宅・空き家の除却に取り組む市町村を支援しており、除却後の土地の 固定資産税等を減免したり、税額増加分を補助したりする市町村も一定数存在します (出典:国土交通省「空き家再生等推進事業について」)。

民間の調査によれば、自治体ごとの補助金の上限額は20万〜100万円程度、 補助率は解体費用の20〜50%程度に設定されているケースが多いとされています (出典:「空き家の解体補助金はいくら?全国10自治体の相場一覧」)。 ただし制度の有無・金額・対象要件は自治体ごとにまったく異なるため、 必ずお住まいの市区町村の窓口・公式サイトで最新情報を確認してください。

補助金申請の基本的な流れ

1
自治体へ事前相談
2
交付申請・審査
3
交付決定後に着工
完了報告で
補助金が交付

ここで最も注意したいのが、「着工前の申請」が必須という点です。 交付決定が出る前に解体工事を始めてしまうと、多くの自治体で補助金の対象外になります。 さらに「先着順で予算に達し次第終了」「登録業者・市内業者限定」といった条件が 付いていることも多く、解体業者に見積もりを依頼する前に、 まず自治体の窓口へ相談することをお勧めします。

※補助金の対象要件・上限額・申請期限は自治体によって大きく異なります。 実際の申請にあたっては、必ずお住まいの市区町村の窓口にご確認ください。

【要注意】解体すると固定資産税が上がることがある

住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」という軽減措置があり、200㎡以下の部分は 固定資産税の課税標準が本来の6分の1に、200㎡を超える部分は3分の1に軽減されています。 この特例は「住宅の用に供されている土地」が対象であるため、 建物を解体して更地にすると、翌年度からこの軽減措置がなくなり、 固定資産税の負担が実質的に最大6倍程度まで増える可能性があるのです (出典:国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」)。

図解:更地にすると固定資産税の負担は最大6倍に

1 最大6倍 建物あり (住宅用地特例) 解体後(更地) (特例対象外)
出典:国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」をもとに作成

放置した空き家が「特定空家等」に指定され、勧告を受けた場合も同様にこの特例が 解除されるため、実は「解体しなければ税金は上がらない」というわけでもありません。 詳しくは 実家の空き家を相続したらどうする?放置のリスクと3つの選択肢 でも解説しています。つまり「何もしない」も「解体する」も、 どちらも固定資産税が上がるリスクを抱えているという点は覚えておいてください。

※固定資産税の実際の増減は、自治体・土地の面積・用途地域によって異なります。 正確な金額は納税通知書や自治体の資産税課にご確認ください。

選択肢 固定資産税への影響
解体して更地にする住宅用地特例が外れ、最大6倍程度に増額
放置して特定空家等に指定される勧告後、同様に特例が解除され増額
賃貸に出す・活用する住宅用地特例を維持したまま運用できる

本当に「解体」が正解か?もう一つの選択肢

ここまで見てきたように、解体には数十万〜百万円超の出費と、固定資産税増額という 2つの負担が伴います。私たちボロリッチの投資戦略は、土地を更地にして新築の家を建て、 それを販売して利益を得るというモデルではありません。 あくまで、今ある古い建物を活用し、そこから長期的に「家賃収入」という インカムゲインを得ることを目的としています。

建て替えができない再建築不可物件であっても、建物がそこに存在し、 人が住める状態を維持できるのであれば、収益上は何の問題もないというのが 私の基本的な考え方です。この発想は 再建築不可物件は買っても大丈夫?リスクと見極め方 でも詳しく解説しています。

相続した実家であれば、すでに土地・建物を保有している状態からスタートできるため、 新たに物件を購入するより初期費用を抑えやすいという特徴もあります。 どこまで手を入れれば賃貸として貸し出せる状態になるのか、 費用感の考え方については ボロ戸建てのリフォーム費用の考え方|どこまで直すのが正解か で解説していますので、「解体」を決断する前に一度目を通してみてください。

リフォーム前の築古戸建ての室内。解体せずに活用する選択肢をイメージした写真

もちろん、立地や建物の傷み具合によっては、解体して売却したほうが合理的な ケースもあります。判断に迷う場合は、解体業者だけでなく、 築古物件の活用に詳しい不動産会社にも相談し、両方の選択肢を 比較検討することをお勧めします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の解体・税務上の助言ではありません。 実際の判断にあたっては、解体業者・自治体窓口・税理士など専門家にご確認ください。

まとめ

空き家の解体費用は、木造住宅で坪3万〜5万円、30坪ならおよそ80万〜150万円が相場です。 自治体の補助金制度を使えば負担を抑えられる可能性がありますが、 「着工前の申請」が必須という点には注意が必要です。

さらに見落とされがちなのが、解体して更地にすると住宅用地の特例が外れ、 固定資産税が最大6倍程度まで増える可能性があるという点。 「解体すれば安心」と単純に考えず、費用・補助金・税金という 3つの側面から冷静に判断することが大切です。

放置した場合のリスクと売却・賃貸・専門家相談の3つの選択肢については 実家の空き家を相続したらどうする?放置のリスクと3つの選択肢で、 再建築不可物件でも収益化できる考え方については 再建築不可物件は買っても大丈夫?リスクと見極め方で、 リフォーム費用の考え方については ボロ戸建てのリフォーム費用の考え方|どこまで直すのが正解かで、 築古戸建て投資でかかる税金・経費の全体像については 築古戸建て投資の税金・経費まとめ|固定資産税はいくら?で、 格安中古物件投資の基本については 空き家問題を「資産」に変える。格安中古物件投資入門 でも詳しく解説していますので、あわせてお読みください。