誰も住まなくなった築古の戸建て。持ち続ける空き家への課税が強まる流れを考えるイメージ

「使わない実家や空き家を、とりあえず持ったまま放置している」—— その持ち方が、いま税金の面で急に不利になろうとしています。 2026年に入り、空き家を「持ち続けること」そのものに課税を強める動きが相次いで表面化しました。

1つは、管理が行き届かない空き家の固定資産税が最大6倍になる仕組みの本格運用。 もう1つは、大阪・寝屋川市が可決した全国初の「空き家税」です。 どちらも共通するメッセージは、「放置し続ける人ほど、税金で損をする」という流れです。

この記事では、ニュースの紹介は最小限にして、 「で、自分の空き家はどうすればいいのか」に大半を割きます。 2つの動きを整理し、自分は対象になるのか、いつまでに何をすべきか、 そして売る・貸す・管理するの判断と落とし穴まで、意思決定の順番でまとめます。

いま何が起きている?持ち続ける空き家への2つの課税

要点:「管理不全なら固定資産税6倍」と「持っているだけで空き家税」。2つの流れが同時に動いています。

これまで空き家は「持っていても税金は安い」と考えられがちでした。 住宅が建つ土地には固定資産税を軽減する「住宅用地特例」があるからです。 しかしその前提が、2つの制度の動きで崩れ始めています。順番に見ていきます。

① 管理不全空き家=固定資産税が最大6倍(施行済み)

空家等対策特別措置法(令和5年改正)により、倒壊や衛生・景観の悪化のおそれがある空き家は 「特定空家等」「管理不全空家等」に指定され得ます。自治体の 勧告を受けると住宅用地特例が解除され、土地の固定資産税は 最大で約6倍に跳ね上がる可能性があります (出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」(2026年8月時点))。

これはすでに施行され、運用が本格化している制度です。 「まだ先の話」ではありません。事業者が「6倍化リスク診断ツール」を出すほど、 自分の空き家が対象になるかどうかへの関心は高まっています。

② 空き家税=持っているだけで課税(可決・2029年度課税予定)

もう1つが、大阪・寝屋川市が2026年7月に可決した 「空き家流通促進税」です。市内全域を対象とするのは全国初で、 2029年度から課税、税率は35%とされています (出典:R.E.port「大阪・寝屋川市で全国初『空き家流通促進税』」(2026年8月時点))。

現時点で実際に課税が始まっている自治体はまだ限られますが、 報道では周辺自治体も注目しているとされ、いわゆる「大相続時代」を見据えた流れとして注目されています。 つまり「今は対象外でも、数年後には自分の地域も」という可能性が視野に入ってきた、ということです。

※空き家税は自治体ごとの新税で、対象・税率・開始時期はそれぞれ異なります。 お住まいの地域が対象かどうかは、必ず各自治体の公式情報でご確認ください。

図解:2つの動きを1枚で比較

要点:「6倍化」は全国どこでも今すぐ関係する話、「空き家税」は地域限定でこれから広がるかもしれない話です。

2つは似ているようで性格が違います。混同しないよう、比較表で整理します。

項目固定資産税6倍化空き家税(寝屋川市)
状態施行済み・運用本格化可決・2029年度課税予定
対象全国(勧告を受けた空き家)寝屋川市内(全域が対象)
きっかけ管理不全・特定空家の勧告市内に空き家を所有
負担の目安土地の固定資産税が最大約6倍税率35%(詳細は市の条例による)

※表の数値は各出典(国土交通省・R.E.port、いずれも2026年8月時点)にもとづく概要です。 個別の税額は物件の評価額や各自治体の条例で変わります。

自分の空き家は対象になる?セルフチェック

要点:まず効いてくるのは「6倍化」。管理が行き届いているかどうかが分かれ目です。

多くの読者にとって、いま現実に関係するのは全国共通の「6倍化」の方です。 次のいずれかに当てはまるほど、勧告→特例解除のリスクは高まります。 あてはめてみてください。

チェック項目リスクの高まり方
誰も住まず数年放置している管理不全と判断されやすくなる
草木の繁茂・破損・ゴミの放置周辺への悪影響として指導・勧告の対象に
遠方で見回りに通えない状態悪化に気づけず放置が進む
名義が故人・祖父母のまま管理責任者が曖昧になり対応が遅れる

逆に言えば、最低限の管理さえ続けていれば、いきなり6倍になるわけではありません。 勧告は段階を踏みます。まずは「対象になりやすい状態を避ける」ことが第一歩です。 維持費の内訳や6倍化の仕組みは 実家の維持費は年間いくら?持ち続けて損する人・貸す人 で詳しく解説しています。

※名義が故人のままの場合、2024年4月から相続登記が義務化されています(正当な理由なく怠ると 10万円以下の過料の対象)。放置リスクの全体像は 実家の空き家を相続したらどうする?放置のリスクと3つの選択肢 をご覧ください。

いつまでに何をする?時系列で整理

要点:「今すぐ管理」「数年内に出口を決める」「令和9年末の控除期限」の3つを押さえます。

課税の流れを踏まえると、動くべきタイミングは大きく3つに分かれます。 放置していると税負担が増える方向にしか動かないので、早い順に手を打つのが得策です。

図解:持ち続ける空き家、やることの時系列

今すぐ 最低限の管理で 6倍化を避ける 数年内 売る・貸す・管理の 出口を決める 令和9年12月末 売るなら3000万円 控除の期限を意識
出典:本記事オリジナル作図(各制度の期限・考え方を整理したもの)

特に「売る」を選ぶ可能性があるなら、税制の期限は要チェックです。 相続した空き家を売る場合、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を 控除できる特例があり、対象となる譲渡は令和9年(2027年)12月31日までです (相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円に減額) (出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(2026年8月時点))。 詳しい要件は 相続空き家の3,000万円控除|売却時の要件と注意点 で解説しています。

3つの出口と費用・落とし穴

要点:課税から逃げる最善手は「使わない空き家を放置し続けないこと」。出口は3つです。

税負担を止める・軽くする方法は、突き詰めると「持ち続けて放置しない」に集約されます。 具体的な出口は次の3つ。自分の物件の立地と状態にあてはめて選びます。

① 貸す:家賃を生む資産に変える

一定の賃貸需要がある立地なら、貸して家賃を得るのが有力です。 維持費という「出ていくお金」を家賃という「入ってくるお金」に反転でき、 人が住むことで管理不全のリスクも下がります。 築古でボロボロでも、最低限の修繕や現状渡しで入居の窓口は広げられます。 活用の入口としては 空き家バンクの使い方|メリット・デメリットと失敗しない選び方 も参考になります。
落とし穴:過剰リフォームで回収不能に陥りやすい点。かける費用は家賃から逆算します。

② 売る:現金化して固定費ごと止める

賃貸需要が乏しい立地や、これ以上お金をかけたくない場合は売却です。 売れば維持費も課税リスクもその時点で止まります。 前述の3,000万円控除を使える可能性があるなら、期限内の売却で手残りが大きく変わります。 「売れないかもしれない」と感じる物件は 相続した実家が売れないどうする?負動産化を防ぐ出口5つ で出口の広げ方を確認してください。
落とし穴:値付けが高すぎて長期間売れ残り、その間ずっと固定費が出続けること。

③ 管理して持つ:使う予定がある場合だけ

「数年内に自分や家族が使う」など明確な予定がある場合に限り、 きちんと管理しながら持つ選択が合理的です。 その場合も、勧告・6倍化を避けるための最低限の管理は必須です。 解体して更地にする手もありますが、更地は住宅用地特例が外れて 固定資産税が上がる点に注意が必要です (空き家の解体費用相場|補助金と「解体しない」という選択肢)。
落とし穴:「なんとなく持ち続ける」が一番損。予定がないなら①か②へ。

今月からできること

要点:まずは「状態の確認」「名義の確認」「出口の仮決め」の3つから。

ここまでできれば、「なんとなく不安」から「数字と期限で判断できる」状態に変わります。 課税の流れは、待っていても有利にはなりません。動いた人から負担を止められます。

まとめ

空き家を持ち続けることへの課税は、「管理不全なら固定資産税6倍」(全国・施行済み)「空き家税」(地域限定・これから)の2方向で強まっています。 共通するのは「放置し続ける人ほど損をする」という流れです。

いま多くの人に関係するのは全国共通の6倍化。まずは最低限の管理で対象になるのを避け、 数年内に売る・貸す・管理して持つの出口を決めるのが基本です。 売るなら令和9年末の3,000万円控除の期限も意識しましょう。

関連する動き方は、 実家の維持費は年間いくら?持ち続けて損する人・貸す人実家の空き家を相続したらどうする?放置のリスクと3つの選択肢相続した実家が売れないどうする?負動産化を防ぐ出口5つ相続空き家の3,000万円控除|売却時の要件と注意点で、 格安中古物件投資の全体像は 空き家問題を「資産」に変える。格安中古物件投資入門 でも解説しています。あわせてお読みください。