相続した実家の空き家。3000万円控除の期限内に売却を検討するイメージ

「相続した実家、いつか売ろうと思って空き家のまま置いている」—— その『いつか』が、実は数百万円の税金の差を生むことがあります。

相続した空き家を売るときに使える「空き家の3000万円特別控除」には、 相続開始からの期限制度そのものの期限という2つのタイムリミットがあるからです。

この記事は、控除の細かい要件を並べる解説ではなく、 「自分はいつまでに、何をすればいいか」を逆算で決めるための順番にしぼってまとめる保存版です。 控除の要件そのものは 相続空き家の3,000万円控除|売却時の要件と注意点 で詳しく解説しています。

結論:期限は「2つ」ある。近いほうに間に合わせる

このセクションの要点:控除を使うには、相続開始からの3年ルールと、制度自体の期限(令和9年末)の、早く来るほうに間に合わせる必要があります。

先に結論をまとめます。

ここでいう「売却」は、売買契約だけでなく引き渡し(譲渡)までを指すのが基本です。 買主探し・価格交渉・(必要なら)解体や耐震改修まで含めると、 期限ぎりぎりから動き出したのでは間に合わないことが起きます。

※本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断ではありません。適用可否・期限の当てはめは 必ず税務署または税理士にご確認ください。

いま何が起きている?期限の接近と新耐震への拡大要望

このセクションの要点:制度の期限(令和9年末)が近づく一方、対象を新耐震にも広げる「要望」が出ています(=まだ未決定)。

空き家の3000万円控除は、空き家の発生を抑える目的でつくられた制度で、 令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象とされています (出典:国税庁 No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」・2026年8月時点)。 期限まで残り時間が意識されるフェーズに入っています。

対象になる家屋は現在、昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた旧耐震の戸建てが中心です。 これに対し、令和9年度の税制改正では、 新耐震(1981年6月以降)の空き家も対象に加えることが要望されています (制度の概要は国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置」・2026年8月時点)。

ただしこれはあくまで「要望」であり、まだ決まった話ではありません。 「そのうち新耐震も対象になるだろう」と当て込んで待つのは危険です。 現時点で対象になる旧耐震の実家をお持ちなら、いま動ける期限で判断するのが安全です。

※新耐震への対象拡大は2026年8月時点で税制改正の「要望」段階であり、施行・適用が確定したものではありません。 最新の決定内容は国税庁・国土交通省の公表を必ずご確認ください。

まず確認:自分の実家は控除の対象か

このセクションの要点:期限の前に、そもそも対象かを確認します。旧耐震・戸建て・被相続人が一人で居住、が入口です。

期限を数える前に、自分の実家が控除の土俵に乗っているかを確認しましょう。 大まかな入口の条件は次のとおりです。

確認する点 対象になりやすい条件
建築時期昭和56年5月31日以前に建築(旧耐震)※新耐震は要望段階
建物の種類戸建て(マンション等の区分所有建物は対象外)
住んでいた人相続開始の直前まで被相続人が一人で居住(老人ホーム入居の特例あり)
相続後の使い方貸付け・事業・居住に使っていない(空き家のまま)

※出典:国税庁 No.3306(2026年8月時点)をもとに作成。老人ホーム入居の特例など細かな要件は個別に異なります。

親が施設に入ってから空き家になったケースでも、一定の要件を満たせば対象になり得ます。 その場合の考え方は 親が施設入居で実家が空き家|固定資産税6倍の誤解と3000万控除 で整理しています。まだ売るか決めかねている段階なら、 実家の空き家を相続したらどうする?放置のリスクと3つの選択肢 で全体の選択肢をつかんでおくと判断が速くなります。

図解:「3年の壁」の期限の数え方

このセクションの要点:起点は「相続開始があった日」。そこから3年を経過する日の属する年の12月31日が期限です。

いちばん間違えやすいのが、この期限の数え方です。起点は相続開始があった日(=被相続人が亡くなった日)。 そこから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却(引き渡し)を完了させる、というのがルールです (出典:国税庁 No.3306・2026年8月時点)。

図解:期限の数え方(例:2024年5月に相続が発生した場合)

相続開始 2024年5月 3年を経過する日 2027年5月 その年の12/31=期限 2027年12月31日
出典:国税庁 No.3306の期限の考え方をもとに作成した単純化した例(実際の当てはめは個別に確認してください)

ポイントは2つです。「亡くなった日の3年後ちょうど」ではなく、その年の年末(12月31日)まで猶予がある点。 そして、この期限が制度自体の期限(令和9年12月31日)より後になるなら、先に来る令和9年末で頭打ちになる点です。

たとえば2026年に相続が発生した場合、相続からの3年ルールで数えると2029年末まで見えますが、 制度の期限は2027年(令和9年)12月31日。この場合は2027年末までに売却を完了しないと控除は使えません。 「3年あるから大丈夫」と思い込むと、制度の期限で足元をすくわれます。

築古戸建ての室内。相続した空き家を期限内に売る準備を進めるイメージ

逆算スケジュール|今月からやることリスト

このセクションの要点:期限から逆算すると、確認書の取得・解体や耐震改修・買主探しに数か月かかります。今月やることから並べます。

売却完了までには、意外と多くの工程があります。特に建物を残して売るなら耐震改修、 土地で売るなら解体が必要になるケースがあり、いずれも数か月単位の時間がかかります。 期限から逆算した動き方を、意思決定の順に並べます。

期限から逆算した進め方(目安)

1
対象か確認
(建築時期・居住状況)
2
売り方を決める
(耐震改修か解体か)
3
確認書を申請
(市区町村の窓口)
4
期限内に売却完了
→ 翌年に確定申告

特に見落としがちなのが、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」です。 これがないと確定申告で控除を受けられません。交付には必要書類の準備と自治体の処理期間がかかるため、 売却の目途が立った段階で早めに窓口へ問い合わせておくと安心です。

「解体してから売るべきか、建物を残すべきか」で迷う場合は、 空き家は解体せず売れる|古家付き・現況渡し・買取の使い分け で手取りベースの比べ方をまとめています。更地にすると固定資産税が上がる点にも注意が必要です。

費用と落とし穴|間に合わせるための注意点

このセクションの要点:解体費、相続人3人以上の控除減額、他の特例との併用可否が、金額を大きく左右します。

期限に間に合わせることと同じくらい、「いくら手元に残るか」を左右する論点があります。 主な落とし穴を整理します。

解体・改修に時間と費用
工事は数か月。期限直前着手は危険

相続人3人以上は減額
1人あたり最高2000万円に

売却代金は1億円以下
超えると特例は使えない

確認書がないと不可
市区町村の交付に時間がかかる

なかでも相続人が3人以上いる場合は、令和6年(2024年)1月1日以降の譲渡から、 1人あたりの控除上限が最高3000万円から最高2000万円に引き下げられています (出典:国税庁 No.3306・2026年8月時点)。 兄弟姉妹で共有相続した実家では、この点が手取りに直結します。

共有名義の実家の固定資産税や意思決定でつまずきやすい点は 単独相続した実家の固定資産税、兄弟に分担義務はある?誰が払う でも触れています。売るか貸すかで迷う場合は、 相続した実家が売れないどうする?負動産化を防ぐ出口5つ もあわせてご覧ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務上の助言ではありません。 適用可否・期限の当てはめ・他の特例との併用可否は、必ず税理士や税務署にご確認ください。

次に読むべき記事

このセクションの要点:控除の要件・売り方・売れないときの出口を、この順で読むと迷いません。

期限の全体像をつかんだら、次は具体の判断です。関連記事を意思決定の順に並べます。

「売る」ではなく「貸して資産にする」道を検討したい方は、格安中古物件投資の基本を 空き家問題を「資産」に変える。格安中古物件投資入門 で解説しています。相続した実家を負動産で終わらせない選択肢として、あわせてご覧ください。

まとめ

相続した空き家で3000万円控除を使うには、相続開始から3年目の年末制度自体の期限(令和9年12月31日)のうち、早く来るほうまでに売却を完了する必要があります。

解体や耐震改修、確認書の取得には数か月かかります。「3年あるから」と先送りにせず、 対象かの確認→売り方の決定→確認書の申請を今月から逆算で動くのが安全です。

新耐震への対象拡大は要望段階(=未決定)です。いま対象になる旧耐震の実家は、いま動ける期限で判断する ——これが数百万円の差を生まないための基本方針です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務上の助言ではありません。 実際の申告・手続きにあたっては、必ず税理士など専門家にご確認ください。