「来年の税制改正で、空き家の税金って結局どうなるの?」—— 秋になると、こんな相談が一気に増えます。
毎年この時期、各省庁が翌年度の「税制改正要望」を出し、それが年末の『税制改正大綱』でまとまって、はじめて正式に決まります。 令和9年度(2027年度)の要望には、不動産・空き家に関する項目が約12本並びました(2026年10月時点)。
この記事は、その中でも築古戸建て・空き家・相続した実家の所有者に効く項目だけを抜き出し、 ①税はいつ決まるのか → ②自分に効く要望はどれか → ③「決定」と「検討中」をどう見分けるか → ④大綱を待たず今やること → ⑤次に読む記事 の順に整理した「まとめ(ハブ)」です。要望はあくまで『お願い』の段階で、まだ決定ではありません。そこを混同しないことが、いちばんの落とし穴対策になります。
目次
① 税はいつ決まる?要望→年末大綱→通常国会の流れ
このセクションの要点は「秋の『要望』はまだ決定ではなく、12月の『税制改正大綱』で方向が固まり、翌春の国会で法律になって初めて確定する」ということです。
税金のニュースは、どの段階の話なのかで重みがまったく違います。流れはいつも同じで、次の4ステップです。
税制改正が決まるまでの流れ
各省庁が要望
税制改正大綱
国会で法改正
新制度スタート
いま出ているのは、ステップ1の「要望」です。国土交通省などが「この制度を延ばしてほしい・緩めてほしい」と財務省にお願いしている段階にすぎません。 ニュースで「延長へ」と見出しが付いても、まだ決まっていないのが実態です。
実際に信じて動いてよいのは、12月の税制改正大綱で項目が載り、さらに翌春の国会で法律が通ってからです。 逆に言えば、すでに法律で期限が決まっている現行制度は「確定した事実」として今すぐ逆算できます。この違いが、以降の判断の土台になります。
② 空き家・築古に効く要望はどれか(早見表)
このセクションの要点は「令和9年度要望のうち、築古・空き家の所有者に直接効くのは『相続空き家の3000万円控除の延長』『買取再販の特例延長』『固定資産税の負担調整の延長』など。いずれも現時点では“要望”で、決定ではない」ことです。
不動産関連の約12項目から、ボロ戸建て・空き家・相続した実家に関係の深いものを抜き出すと、おおむね次のとおりです (要望内容の出典:いえーる住宅研究所「2027年度税制改正要望」・2026年10月時点)。
| 項目 | 要望の内容(=検討中) |
|---|---|
| 相続空き家の3000万円控除 | 適用期限を令和13年末まで4年延長/旧耐震要件の緩和を要望 |
| 買取再販の特例 | 登録免許税などの軽減を令和11年3月末まで延長を要望 |
| 固定資産税の負担調整 | 負担調整措置を令和12年3月末まで3年延長を要望 |
| 登録免許税の軽減 | 住宅用家屋の軽減を延長+床面積要件の緩和を要望 |
どれも「使えるなら助かる」制度ばかりですが、表に書いたのは“お願い”の中身です。金額も期限も、12月の大綱と来春の国会を経て変わる可能性があります。 要望段階の数字を前提に売買の計画を立てるのは危険——ここが初心者のいちばんの落とし穴です。
③ 相続空き家の3000万円控除:決定は令和9年末、延長は「要望」
このセクションの要点は「相続空き家の3000万円控除は、現行の法律では『令和9年(2027年)12月31日までの売却』が期限(=確定した事実)。令和13年末まで4年延ばす案は、まだ『要望』で未決定」ということです。
相続した実家の売却でいちばん効くのが、この「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」、通称・空き家の3000万円控除です。 一定の要件を満たせば、売却益から最大3000万円を差し引けます (出典:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例・2026年10月時点)。
ここで絶対に押さえたいのが、現行法での期限です。国税庁の案内では、対象となる譲渡は令和9年(2027年)12月31日までと明記されています。 令和9年度の税制改正要望では、これを令和13年末まで4年延長する案が出ていますが、決まるのは早くても12月の大綱・翌春の国会です。
つまり現時点では、「令和9年末が期限」という確定した前提で逆算して動くのが安全です。「どうせ延長されるだろう」と待っていて、もし延長が見送られたら、間に合わず特例を丸ごと失う——これが最悪のシナリオです。
※この特例は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、相続開始直前に被相続人以外に居住者がいなかったこと、売却代金が1億円以下であること、相続時から売却まで賃貸・事業・居住に使っていないことなど、細かい要件があります。令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合、控除額は1人あたり2000万円に下がります。要件・期限・金額は税制改正で変わります。利用の際は必ず税務署・税理士で最新内容をご確認ください。
控除の要件や注意点は 相続空き家の3,000万円控除|売却時の要件と注意点 に詳しくまとめています。あわせて、相続税を払った人が使える 相続した実家を売るなら3年10か月以内|取得費加算で譲渡税を減らす も確認してください。どちらも「いつまでに売るか」で税額が大きく変わる制度です。
④ 「決定」と「検討中」の見分け方
このセクションの要点は「法律・国税庁・自治体の公式ページに『期限◯年まで』と載っていれば決定。ニュースの『延長へ/要望』は検討中。この2つを分けて読むだけで、判断を誤らない」ことです。
税制のニュースにふりまわされないための、かんたんな見分け方は次のとおりです。
- 決定(今すぐ使える/逆算してよい):国税庁のタックスアンサーや法律本文に「令和◯年◯月◯日まで」と書かれているもの
- 検討中(まだ信じて動かない):「税制改正要望」「〜へ」「延長を求める」など、省庁や業界の“お願い”段階のもの
大事なのは、検討中の制度は「あったらラッキー」程度に置いておくこと。 前回の記事でも書いたとおり、リフォーム減税や補助金と同じで、制度ゼロ前提でも成り立つ計画を立てておけば、延長されれば上振れ、見送られても困りません。制度の有無に収支を預けないのが鉄則です。
⑤ 大綱を待たず、今やること
このセクションの要点は「年末の大綱を待つより先に、『現行で確定している期限』から逆算して動く。とくに相続空き家の3000万円控除を使うなら、令和9年末の売却完了から逆算した段取りが最優先」ということです。
「税制改正が決まってから考えよう」と待っていると、確定している現行の期限を逃します。今の時点でやるべきことは、次の3つです。
- 自分に関係する制度の「現行の期限」を確認する:相続空き家の3000万円控除なら令和9年末まで。延長要望はいったん脇に置く
- 期限から逆算してスケジュールを引く:売却は媒介契約・残置物の片付け・査定・買主の審査で数か月かかる。年内〜翌年の決済を狙うなら、秋のうちに動き出す
- 12月の大綱で「自分の制度」がどうなったかだけチェックする:延長・緩和が正式に載れば、そのとき計画を上書きすればよい
相続した実家を「いつから・どの順番で」動かすかは、 相続した実家の空き家、放置リスクと3つの選択肢 や 空き家を持ち続けると税金はいくら?固定資産税の負担と判断 も参考になります。「売る・貸す・直す」の判断は、税の確定を待たずに現行ルールで前へ進められます。
⑥ 次に読むべき記事
令和9年度の税制改正は「①要望はまだ決定ではない → ②現行で確定している期限から逆算する → ③12月の大綱で自分の制度だけ確認する」の順で見れば、ふりまわされずに済みます。 関連の深い記事から読んでみてください。
- 相続空き家の3,000万円控除|売却時の要件と注意点(控除の本体)
- 相続した実家を売るなら3年10か月以内|取得費加算で譲渡税を減らす(売却の期限)
- 築古リフォーム減税はいくら?所得税と固定資産税が減る条件と申請(リフォーム減税)
- 空き家を持ち続けると税金はいくら?固定資産税の負担と判断(持ち続ける税負担)
- 相続した実家の空き家、放置リスクと3つの選択肢(最初の判断)
- 空き家問題を「資産」に変える。格安中古物件投資入門(全体像)
まとめ
令和9年度(2027年度)の税制改正要望には、相続空き家の3000万円控除の4年延長や、買取再販・固定資産税の負担調整の延長など、築古・空き家に効く項目が並びました。 ただし、これらはすべて“要望”=検討中で、決まるのは年末の大綱と翌春の国会です(2026年10月時点)。
いま信じて動いてよいのは、現行の法律で確定している期限だけ。とくに相続空き家の3000万円控除は令和9年末が現行の期限です。 「延長されるはず」と待たず、確定した期限から逆算して動き、大綱で自分の制度だけ確認する——これが、税制改正の年末にふりまわされない唯一のコツです。