古い実家の前で、相続放棄の3か月の期限をカレンダーで数えるイメージ

「いらない実家を相続放棄したい。でも期限の『3か月』っていつから数えるの?もう過ぎていたらどうしよう」—— 負動産化しそうな空き家を前に、この疑問でつまずく方はとても多いです。

結論から言うと、3か月の起算点は「亡くなった日」ではなく「自己のために相続の開始があったことを知った時」(民法915条)。 死亡を知った日とズレることもあり、ここを勘違いすると放棄できたはずの負債・空き家を背負い込む危険があります。

この記事は法律の説明で終わらせず、①いつから数えるか → ②間違えやすい『知った時』 → ③再転相続の数え方 → ④期限が迫った・過ぎたときの手当て → ⑤放棄の前に確認することの順で、「で、自分はどう動けばいいか」を中心にまとめます。

① 相続放棄の「3か月」はいつから数える

このセクションの要点は「3か月の起算点は『自己のために相続の開始があったことを知った時』であって、亡くなった日そのものではない」ということです。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを選ばなければなりません。 この期間は「熟慮期間」と呼ばれ、民法915条1項に定められています(出典:民法(e-Gov法令検索・第915条)、2026年8月時点)。

「知った時」とは、一般には①被相続人が亡くなった事実と、②それによって自分が相続人になった事実の両方を知った時を指すと整理されています。 同居していた家族なら死亡日とほぼ一致しますが、疎遠だった親族の相続などでは数週間・数か月あとに知らされることも珍しくありません。

相続放棄の期限は「知った時」から数える

1
被相続人が
亡くなる
2
自分が相続人と
知る=起算点
3
3か月以内に
放棄を申述
家庭裁判所が
受理すれば成立

申述先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です(出典:裁判所「相続の放棄の申述」、2026年8月時点)。 空き家の所在地の裁判所ではない点に注意してください。

※「知った時」がいつかは事情によって判断が分かれます。実際の起算点・手続きは家庭裁判所または弁護士・司法書士など専門家にご確認ください。

② 間違えやすい「知った時」の考え方

このセクションの要点は「死亡を知った日を機械的に起算日とせず、自分が相続人になったと分かった時点で数える」ということです。

特に空き家・負動産では、次のようなケースで起算点がズレます。3か月を「亡くなった日」から数えて焦る前に、自分がどれに当たるか確認しましょう。

ケース 起算点の考え方
同居の親が亡くなった死亡を知った日=起算日になりやすい
疎遠で、後日連絡が来た死亡と自分が相続人だと知った日から
先順位の相続人が全員放棄した自分に相続権が回ってきたと知った時から
後から借金・保証債務が判明財産が無いと信じ相当な理由があれば、判明時から起算される例外も

最後の行が実務で重要です。「相続財産は何も無い」と信じ、そう信じたことに相当な理由があるようなケースでは、あとから借金や保証債務が見つかった時点を起算点とする余地がある、と整理されることがあります。 「3か月を過ぎたから絶対に無理」と自己判断で諦めないことが大切です。

相続放棄しても、放棄の時点で空き家を「現に占有」していれば管理義務が残る場合があります。放棄で本当に手が離れるのかは空き家の相続放棄は危険?残る管理義務と手放す前の選択肢で詳しく解説しています。

③ 再転相続の数え方|放棄しないまま次の人が亡くなったら

このセクションの要点は「親の相続を承認も放棄もしないうちに次の相続人が亡くなると、期限は『あとの人が自分の権利を知った時』から数え直す」ということです。

たとえば、祖父が亡くなり父が相続人になったものの、放棄も承認もしないうちに父まで亡くなった——このように相続が二重に起きる状態を「再転相続」といいます。 このとき、父が持っていた「祖父の相続を承認するか放棄するかの選択権」は、あなた(父の相続人)に引き継がれます。

民法916条は、この場合の3か月について「その者(=あとに亡くなった相続人)の相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時」から起算すると定めています(出典:民法(e-Gov法令検索・第916条)、2026年8月時点)。 つまり、祖父の死亡日ではなく、あなたが「父を通じて祖父の相続の選択権を持った」と知った時から3か月です。

図解:再転相続の3か月は「あとの相続人が知った時」から

祖父 死亡・相続開始 選択せず死亡 選択権を承継 3か月の起算点 孫が「自分に選択権が回ってきた」と知った時から
出典:民法第916条(e-Gov法令検索)をもとに作成

再転相続では、祖父の相続と父の相続を別々に選べるのもポイントです。 たとえば「借金の多い祖父の相続は放棄し、父の相続だけ承認する」といった組み合わせもあり得ます(順序などの細かい条件があるため、実際の可否は専門家に確認してください)。 築古の空き家が代々受け継がれて負動産化しているケースでは、この数え方を知っているかどうかで結論が変わります。

※再転相続の起算点・選択の可否は事案により判断が分かれます。該当しそうな場合は早めに弁護士・司法書士へご相談ください。

④ 期限が迫った・過ぎてしまったときの手当て

このセクションの要点は「迷っているなら『伸長』、過ぎたと思っても即あきらめない」ということです。

相続財産の調査が3か月で終わらないときは、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てることができます。 ただし伸長の申立て自体も、原則として3か月以内に行う必要がある点に注意してください(出典:裁判所「相続の放棄の申述」、2026年8月時点)。

「そもそも相続放棄が自分にとって得なのか」を判断するには、実家を持ち続けた場合のコストも知っておく必要があります。維持費の目安は実家の維持費は年間いくら?持ち続けて損する人・貸す人で試算しています。

老朽化した実家。相続放棄か活用か、期限内に判断するイメージ

⑤ 放棄する前に確認しておくこと

このセクションの要点は「放棄は取り消せない。うっかり承認扱いにならないよう注意し、放棄以外の出口も並べて比べる」ということです。

相続放棄は家庭裁判所に受理されると、原則として後から撤回できません。 また、相続人が相続財産を処分したり、隠したり使い込んだりすると、法律上「単純承認をした」とみなされ(法定単純承認・民法921条)、放棄できなくなることがあります(出典:民法(e-Gov法令検索・第921条)、2026年8月時点)。 「まだ決めていない」段階では、財産に手を付けないのが鉄則です。

そして忘れてはいけないのが、放棄は「プラスの財産も含めて全部を手放す」手続きだということ。空き家だけを捨てて預金は受け取る、はできません。 放置に見える空き家でも、立地しだいでは賃貸で家賃を生む資産に変わることがあります。手放す前に、次の選択肢と費用を並べて比べましょう。

出口 向いているケース 主な注意点
相続放棄明らかに債務超過3か月の期限・全財産を手放す・原則撤回不可
売却して現金化買い手が見込める立地要件を満たせば3000万円控除の余地
賃貸で活用需要のあるエリアリフォーム費用と客付けの見極め
土地だけ国庫帰属更地の不要な土地建物付き不可・審査手数料と負担金

売却時に譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例の要件は相続空き家の3,000万円控除|売却時の要件と注意点、売れない実家の出口の並べ方は相続した実家が売れないどうする?負動産化を防ぐ出口5つにまとめています。 「手放す」以外に活用で資産化する道もあるので、投資としての基本は空き家投資の始め方|格安中古物件投資入門ガイドもあわせてご覧ください。

※本記事は民法の一般的な考え方を初心者向けに整理したものです。個別の該当性・手続きは弁護士・司法書士・税理士など専門家にご確認ください。

⑥ 次に読むべき記事

相続放棄の3か月は「亡くなった日」ではなく「自己のために相続の開始があったことを知った時」から(民法915条)、再転相続ならあとの相続人が選択権を知った時から(民法916条)数えます(2026年8月時点・出典は本文中)。 迷ったら伸長、過ぎたと思っても即あきらめず専門家に相談を。

まとめ

相続放棄の期限「3か月」は、亡くなった日ではなく、自分が相続人だと知った時から数えます(民法915条)。 同居家族なら死亡日と近い一方、疎遠な親族の相続や先順位者の放棄では、起算点が後ろにズレることがあります。

放棄も承認もしないうちに次の相続人が亡くなる再転相続では、あとの相続人が選択権を知った時から3か月(民法916条)。祖父の死亡日から数えるのではありません。 迷うなら伸長、過ぎたと思っても即あきらめず、財産に手を付けないうちに専門家へ相談しましょう。

放棄は全財産を手放す最終手段です。売却・賃貸・国庫帰属という別の出口と費用を並べたうえで、いちばん損の少ない道を選んでください。 ボロリッチでも、相続した空き家の活用・出口の相談を受け付けています。