築古戸建ての外壁・外観。生涯でかかる修繕費を実質利回りに織り込むイメージ

「表面利回り15%、これは買いだ」——そう思って築古戸建てを買った人が、数年後に外壁と屋根の修繕見積もりを見て青ざめる。 築古投資でいちばん静かに利益を削るのが、この修繕費(メンテナンス費用)です。

では、戸建ては生涯でどれくらい修繕費がかかるのか。最新調査では、これまでにかけた修繕費の合計は平均554万円という数字が出ています。 この記事では、その実データを紹介したうえで、修繕費を「実質利回り」にどう織り込むかを初心者向けに整理します。

結論:表面利回りは「修繕費を引いてから」判断する

このセクションの要点:戸建て投資の勝ち負けは、家賃の高さより「修繕費をいくらで見込んだか」で決まります。

先に結論を3点でまとめます。

築古・空き家投資は「安く買って直して貸す」が基本ですが、“買った後もお金は出続ける”という前提を外すと計算が甘くなります。 修繕費を先に見込んでおけば、表面利回りの数字に振り回されずに済みます。

※本記事は一般的な情報提供であり、特定物件の投資成果や修繕費を保証するものではありません。金額は建物・地域・劣化状況で大きく変わります。数値は必ず個別の見積もり・一次情報でご確認ください(2026年9月時点)。

戸建ての生涯修繕費は平均554万円(最新調査)

このセクションの要点:新築一戸建てを30年以上持った人の修繕費合計は、平均で554万円。木造と鉄筋・鉄骨造でも差があります。

不動産情報サービスのアットホームが、新築一戸建てを購入して30年以上住んでいる人を対象に実施した「一戸建て修繕の実態調査2026」(2026年9月発表)では、 これまでにかけた住宅修繕費の合計は平均554.0万円という結果が出ています (出典:マイナビニュース「一戸建ての修繕費はいくらかかった?」(アットホーム調査・2026年9月時点))。

建物構造別に見ると、木造は平均506.8万円、鉄筋・鉄骨造は平均666.4万円。 これは自宅として長く住んだ人の実績ですが、賃貸に回す築古戸建てでも「築年数が進めば、これに近い規模の修繕がいずれ必要になる」という目安として役立ちます。

図解:一戸建ての生涯修繕費(構造別・平均)

全体平均 554.0万円 木造 506.8万円 鉄筋・鉄骨 666.4万
出典:アットホーム「一戸建て修繕の実態調査2026」(マイナビニュース報道・2026年9月時点)をもとに作成。

ここで大事なのは金額の大きさそのものより、「戸建ては30年で数百万円の修繕が“ふつうに”発生する」という事実です。 これを利回り計算に入れていないと、家賃収入がそのまま手残りだと錯覚してしまいます。

お金がかかる場所トップは外壁

このセクションの要点:修繕でいちばんお金がかかるのは外壁。次いで屋根・水まわりなど、大きくてまとまった費用が出る部位です。

同じ調査では、修繕したことがある場所のトップは「外壁」で69.1%の人が経験しており、外壁の修繕費は合計で平均177.6万円にのぼります (出典:マイナビニュース(アットホーム調査・2026年9月時点))。 外壁や屋根は「一度直すとまとまった額が出る」ため、修繕費全体を押し上げる主役になります。

築古戸建てを買うときは、こうした大きな費用が出る部位が、あと何年でメンテ時期を迎えるかを意識すると失敗しにくくなります。代表的な部位を押さえておきましょう。

外壁
修繕経験トップ。塗装・張り替えでまとまった額に

屋根
葺き替え・防水は高額。放置で雨漏りに発展

給排水・水まわり
配管の劣化やキッチン・浴室の交換

建具・設備
サッシ・給湯器・エアコンなど期限つき設備

買う前にこれらの状態を確かめる手段が、前回まとめた中古戸建てのインスペクション(建物状況調査)です。 調査で「外壁は残り数年」と分かれば、その補修費を価格交渉(指値)で差し引く根拠にできます。

表面利回りと実質利回りの違い

このセクションの要点:広告に載る利回りは「表面利回り」。修繕費や固定資産税などを引いた「実質利回り」で見ないと本当の収益は分かりません。

物件広告に「利回り15%」と書いてあるとき、その多くは年間家賃 ÷ 物件価格で計算した表面利回りです。 ここには修繕費も固定資産税も入っていません。実際の手残りに近いのは、これらの経費を引いた実質利回りです。

図解:同じ物件でも「表面」と「実質」でこれだけ違う

表面利回り 年間家賃 ÷ 物件価格 高く見える → 経費が入っていない 実質利回り (家賃 − 修繕費 − 税など) ÷ 総投資額 本当の収益に近い → 修繕費を必ず引く
考え方を単純化した概念図(2026年9月時点)。実際の計算は物件条件により異なります。

表面利回りが高くても、修繕費を差し引いた実質利回りが低ければ「安物買いの銭失い」になりかねません。 利回りの基本の計算方法はボロ戸建て投資の利回り計算、 地方・築古で狙う水準の目安は戸建て投資の利回り目安は何%?にまとめています。

築古戸建てのリフォーム・修繕中の様子。修繕費を利回りに織り込むイメージ

修繕費を実質利回りに織り込む手順

このセクションの要点:修繕費は「毎年◯万円の経費」として、買う前の利回り計算にあらかじめ組み込みます。

修繕費は毎年きっかり同じ額が出るわけではありませんが、「長い目で見て、1年あたりならいくらか」に均して考えると計算に入れやすくなります。手順は次の通りです。

修繕費を利回りに織り込む4ステップ

1
大きな修繕を
洗い出す
2
見積もりを
取る
3
保有年数で
1年あたりに割る
4
家賃から引いて
実質利回り

たとえば「外壁・屋根で近いうちにまとまった修繕が必要」と分かったら、その見積もり額を保有予定年数で割り、年あたりの修繕コストとして家賃収入から差し引きます。 加えて、給湯器・エアコン・畳や壁紙といった設備・内装の更新も忘れずに見込みます。こうして出した数字が、広告の表面利回りより現実に近い「自分の実質利回り」です。

見込む費用 性質 計算での扱い
外壁・屋根・防水数年〜十数年に一度の大型見積額を保有年数で割り、年コスト化
給湯器・エアコン等の設備寿命が来たら交換更新周期で割り、年コストに上乗せ
退去時の原状回復・内装入退去のたび回転を見込んで年平均で計上
固定資産税・保険・管理毎年の固定費年額をそのまま経費に

※上記は費目の考え方を示すものです。具体的な金額は物件の状態・地域・依頼先で大きく異なるため、必ず個別に見積もりを取ってご確認ください(2026年9月時点)。

9割が積み立てていない——だから読者は差をつけられる

このセクションの要点:修繕費を積み立てていない人が約9割。逆に言えば、最初から積む前提で買う人はそれだけで有利です。

同じアットホーム調査では、修繕費を積み立てていない人が約9割、修繕費の相場を「高い」と感じる人が約8割、 さらに3人に1人が資材価格の高騰や資材不足の影響を受けたと回答しています (出典:マイナビニュース(アットホーム調査・2026年9月時点))。

多くの人が「修繕費は突然やってくる想定外の出費」として身構えているわけです。 裏を返せば、最初から毎月いくらかを修繕用に取り分けておくだけで、資金繰りの安定度は大きく変わります。 家賃の一定割合を「修繕積立」として別口座に置いておくのは、築古大家の基本動作です。

なお、資材や人件費の高騰でリフォーム費用そのものが上ぶれしやすい状況は続いています。 背景と対策はリフォーム資材の高騰と費用を抑える考え方、 費用全体の目安はボロ戸建てのリフォーム費用はいくら?にまとめています。

修繕費を抑える順番

このセクションの要点:修繕費は「買う前の交渉」「補助金」「直す範囲の見極め」の3段階で抑えられます。

生涯で数百万円かかる修繕費も、工夫の余地はあります。順番に押さえましょう。

  1. 買う前に価格へ反映する:インスペクションで直近の大型修繕が見えたら、その分を指値で差し引く。買った後に自腹で払うより、買値を下げるほうが確実に効きます
  2. 使える補助金を確認する:断熱・窓・給湯などの省エネ改修は、国の補助制度の対象になることがあります。最新の制度は築古戸建てのリフォーム補助金2026まとめで確認できます
  3. 直す範囲を絞る:賃貸として「貸せる最低限」に絞り、過剰な内装にお金をかけない。DIYでどこまで自分でやるかの線引きは現状渡し・DIYの考え方が参考になります

修繕費を見込まずに突っ込むと、ボロ戸建て投資の失敗例で紹介したような「想定外の出費で赤字」に陥りがちです。 修繕費は“怖い出費”ではなく、最初から見込んでおけば管理できるコストだと考えるのが、長く続けるコツです。

次に読むべき記事

このセクションの要点:修繕費の話は「買う前の見極め」と「利回り計算」の間にあります。前後の記事とあわせて読むと精度が上がります。

修繕費を織り込む力は、物件選びと収支計算の両方につながります。次の関連記事を流れの順に読むと全体像がつかめます。

まとめ

一戸建ての生涯修繕費は平均554万円(アットホーム調査2026)。木造でも約507万円、外壁だけで平均177.6万円という実データがあります (出典:マイナビニュース(アットホーム調査・2026年9月時点))。

築古戸建て投資では、この修繕費を「毎年◯万円の経費」として買う前に実質利回りへ織り込むことが勝ち残りの条件です。 約9割が積み立てていない今だからこそ、最初から見込んで積む人が有利になります。 表面利回りの数字に飛びつく前に、「修繕費を引いても、狙う利回りが残るか」を必ず確かめてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の投資判断・修繕費・投資成果を保証するものではありません。金額・制度は変更される場合があります。実施にあたっては必ず一次情報や専門家にご確認ください(2026年9月時点)。