老朽化した空き家。台風でブロック塀や瓦が飛ぶと所有者が損害賠償を負うことがある

「遠方の実家をしばらく空き家のまま放置している。もし台風で瓦やブロック塀が飛んで、隣の家や通行人を傷つけたら——賠償はいったい誰が払うのか?」 2026年8月、実家じまいに関する調査報道をきっかけに、この不安が検索で増えています。

調査報道では、「災害時に空き家を持ち続けることの損害賠償リスクを知らない」人が多数にのぼると紹介されました。 台風シーズンを前に、他人事ではない読者が多いテーマです。

結論から言うと、答えは民法717条の「土地工作物責任」にあります。 この記事は、ニュースの要約で終わらせず①誰が賠償を負うのか → ②対象になりやすい空き家か → ③台風前にやること → ④火災保険での備え → ⑤危険があるときの対応・相談先 → ⑥次に読む記事の順に、「で、自分はどうすればいいか」を中心にまとめます。

空き家の倒壊が心配な方へ。責任を一律に断定するのではなく、責任を考える際の確認事項と、危険があるときの対応・相談先、そして相談前に整理しておく資料までを順に整理します。読みながら、ご自身の物件の状況を一つずつ確認していってください。

① 責任を考える前に確認すること|損害賠償は誰が払うのか

このセクションの要点は「建物や塀の管理が不十分で他人に被害を与えると、所有者は『過失がなくても』賠償責任を負いうる」ということです。まず責任の仕組みを押さえ、次に自分が当てはまるかを確認していきます。

建物・ブロック塀・門・擁壁・立木などは、法律で「土地の工作物」と呼ばれます。 これらの設置・管理に欠陥があって他人に損害を与えたときの責任を定めているのが、民法717条の土地工作物責任です。

条文の構造は2段階です。まずその工作物を実際に使っている「占有者」が第一次的に責任を負います。 ただし占有者が損害防止に必要な注意をしていた場合は、今度は「所有者」が責任を負うとされています。

ここが空き家で怖いところです。空き家は使っている占有者がいないことが多く、責任はそのまま所有者に向かいます。 しかも所有者の責任には「注意していたから免れる」という逃げ道がなく、過失がなくても責任を負う(無過失責任に近い)構造になっています(2026年8月時点)。 条文は民法(e-Gov法令検索・第717条 土地工作物責任)で確認できます。

民法717条 土地工作物責任の考え方(空き家は所有者に責任が向かいやすい)

1
塀・瓦・立木が
他人を傷つける
2
まず占有者が
責任を負う
3
空き家は占有者
不在で所有者へ
4
所有者は過失なし
でも責任を負う

※本記事は民法717条の一般的な考え方を初心者向けに整理したものです。実際に賠償責任が生じるか・その範囲は、被害の状況や工作物の管理実態によって個別に判断されます。具体的なケースは弁護士・保険会社にご相談ください。

② 自分の空き家は「リスクが高い」タイプか

このセクションの要点は「道路や隣家に接して、飛ぶ・倒れる・崩れる部位がある空き家ほどリスクが高い」ということです。

すべての空き家が同じ危険度ではありません。まずは自分の物件が、被害を出しやすいタイプかを見極めましょう。

状態・立地 災害時のリスク 特に注意する部位
古いブロック塀が道路に面する高い塀の傾き・ひび・鉄筋の錆
瓦屋根・トタンが浮いている高い飛散する屋根材・軒先
隣家と近接・境界に立木高い倒木・枝の落下・越境
傾き・雨漏りで老朽化非常に高い建物本体の倒壊
周囲に人・車が少ない相対的に低いそれでも定期点検は必要

ポイントは、「飛ぶ・倒れる・崩れる部位が、人や隣家に届く位置にあるか」です。 道路や隣家に面したブロック塀・瓦・立木は、台風や地震のときに真っ先に被害源になります。 遠方で普段見に行けない相続空き家は、こうした劣化に気づけないまま放置されがちで、特に危険です。

道路に面した古いブロック塀と老朽化した空き家。台風前の点検が欠かせない

「自分は対象か」を判断するうえで、放置した空き家は税負担の面でも不利になります。 管理不全と判断されると住宅用地特例が外れ固定資産税が上がる仕組みは、空き家を持ち続けると税金が上がる?6倍化と空き家税の総まとめにまとめています。 放置は「賠償リスク」と「税リスク」の両面で損だと押さえておきましょう。

③ 台風が来る前に、今やること

このセクションの要点は「『管理していた実績』を作ることが、被害の予防にも責任の軽減にもつながる」ということです。

工作物責任は「管理に欠陥があったか」が問われます。裏を返せば、危険を放置せず手当てしていた事実が、被害そのものを防ぎ、万一のときの立場も守ります。 台風シーズンの前に、次の順でやることを整理しましょう。

遠方の空き家をどう管理するか・費用の相場は、遠方の空き家管理はどうする?放置リスクと費用相場まとめで具体的に解説しています。 あわせて、侵入・放火などの防犯面は空き家の防犯対策|遠方の相続空き家を侵入盗から守る手順を確認してください。

④ 費用と落とし穴|火災保険・賠償責任の備え

このセクションの要点は「他人への賠償に備えるなら、火災保険とは別に『賠償責任』の特約が要る。空き家は加入条件に注意」ということです。

「火災保険に入っているから安心」と思いがちですが、火災保険は原則自分の建物の損害を補償するもの。 台風で飛んだ瓦が他人を傷つけた・隣家を壊したときの賠償は、別枠の備えが必要です。次の3点を押さえましょう。

空き家・築古物件の火災保険の考え方は、ボロ戸建て投資の火災保険の選び方|築古でも入れる補償とはで詳しく解説しています。 加入条件や賠償特約の有無は保険会社によって異なるため、契約前に必ず個別に確認してください(2026年8月時点)。

そもそも「持ち続けるより手放したほうが安全」という判断もあります。 使い道のない空き家の出口は相続した実家が売れないどうする?負動産化を防ぐ出口5つで整理しているので、賠償リスクを負い続ける前に一度検討する価値があります。

⑤ 危険があるときの対応と相談先・相談前に整理する資料

このセクションの要点は「危険を見つけたら、慌てて自己判断せず『安全確保 → 相談先に連絡 → 資料を揃える』の順で動く」ということです。責任の有無は状況によって個別に判断されるため、まずは被害を広げないことと、正しい窓口に相談することが先決です。

危険があるときの対応(状況別)

「塀が傾いている」「瓦が落ちそう」と気づいたときに、どこから動くかを状況別に整理しました。人や車が通る場所に面している場合は、応急対応を最優先にしてください。

状況 まずやること 相談・連絡先
今まさに崩れそう・落ちそう立入禁止の表示・ロープで近づけない/通行人に注意喚起市区町村の空き家窓口・消防(危険が差し迫る場合)
すでに隣家や人に被害が出た被害状況を写真で記録/けが人がいれば救護を優先保険会社(事故受付)・弁護士
劣化はあるが被害は未発生危険部位を点検・写真で記録し、補修や撤去を手配地元の工務店・空き家管理サービス
自分が所有者か・相続状況が不明登記や相続の状況を確認市区町村の相談窓口・司法書士

どの窓口に相談すればよいか分からないときは、まず物件がある市区町村の空き家相談窓口が出発点になります。多くの自治体が空き家専用の相談先を設けており、危険度の高い空き家については、特定空家等として行政が指導・勧告を行う仕組みもあります。制度の全体像は特定空家は誰が決める?管理不全空き家の認定主体と手続きで、認定の主体や手続きの流れを解説しています。

相談前に整理しておく資料

弁護士・保険会社・自治体のいずれに相談する場合も、手元の情報が揃っているほど話が早く、的確な助言が得られます。相談の前に、次の資料を可能な範囲で整理しておきましょう。

※責任の有無や賠償の範囲は、被害の状況や工作物の管理実態によって個別に判断されます。本記事は一般的な考え方の整理であり、個別の判断は弁護士・保険会社・市区町村の窓口など専門家にご相談ください(2026年8月時点)。

⑥ 次に読むべき記事

空き家の塀や瓦が台風で他人を傷つけると、民法717条の工作物責任で所有者が過失なしでも賠償を負いうるのがポイントです(2026年8月時点・出典は本文中)。 恐れるより、点検・手当て・管理委託・保険の順で今できる備えを進めましょう。

まとめ

遠方の相続空き家が台風でブロック塀や瓦を飛ばし、他人や隣家に被害を与えたら、民法717条の土地工作物責任が問題になります。 空き家は占有者がいないことが多く、責任は所有者に向かい、過失がなくても賠償を負いうる構造です(2026年8月時点・出典は本文中)。

だからこそ、放置ではなく点検・危険部位の手当て・管理委託で「管理している状態」を作ることが第一。 加えて賠償責任の保険で最後の備えをし、それでも使い道がないなら手放す出口も検討しましょう。

「遠方で見に行けない」「どこから手を付ければいいか分からない」という方は、市区町村の空き家窓口や専門家に相談を。 ボロリッチでも、空き家の管理・活用・出口の相談を受け付けています。