電卓と課税明細書で空き家の固定資産税を試算するイメージ

「空き家を放置すると固定資産税が6倍になる」とよく聞きます。では自分の実家は、具体的にいくら増えるのか——ここが一番知りたいのに、答えが載っている記事はなかなかありません。

結論から言うと、増える金額は手元の課税明細書に書いてある「土地の評価額」から自分で試算できます。しかも、多くの人が思うほど「きれいに6倍」にはなりません

この記事では、評価額を見る → 特例が効いているときの税額 → 外れたときの税額 → 差額の4ステップで、空き家の固定資産税がいつから・いくら上がるかを計算します。数字は総務省の一次情報にもとづきます。

結論:実額はこう出す(3行)

このセクションの要点:増える税額は「評価額 × 税率」の引き算で出せます。倍率より“いくら増えるか”で判断しましょう。

先に結論を3点でまとめます。

※本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・法務判断ではありません。税率は自治体により異なる場合があり、負担調整措置で実際の税額は前後します。正確な金額は物件所在地の市区町村や税理士にご確認ください。

なぜ「6倍」と言われるのか

このセクションの要点:「6倍」の正体は住宅用地特例。効いている土地の課税標準が1/6だから、外れると元に戻って“最大6倍”に見えるだけです。

住宅が建つ土地(住宅用地)は、固定資産税のもとになる課税標準額を大きく引き下げる特例が使えます。これが住宅用地特例です。 小規模住宅用地(200㎡以下の部分)は課税標準が評価額の6分の1まで下がります (出典:総務省 固定資産税の概要(住宅用地に対する課税標準の特例)・2026年9月時点)。

つまり、いまの安い税額は「6分の1に軽くされた後の金額」です。勧告や解体でこの特例が外れると軽減前に戻るため、「6倍になった」ように見える——これが正体です。 特例そのものの仕組みや、外れる4つのパターンは 住宅用地特例とは|空き家で外れると固定資産税がいつ・いくら上がる で詳しく解説しています。この記事は、そこから一歩進んで「で、うちは結局いくら増えるのか」を数字で出します。

実額の出し方4ステップ

このセクションの要点:必要なのは課税明細書に載っている「土地の評価額」1つ。あとは掛け算と引き算だけです。

毎年春に届く納税通知書・課税明細書を用意してください。次の4ステップで増える金額を出します。

図解:増える税額を出す4ステップ

①評価額を 明細で確認 ②特例あり の税額 ③特例なし の税額 ④③−②= 増える額
出典:固定資産税の計算の仕組みを単純化して作成(2026年9月時点)。税率・負担調整は自治体・年度で異なります。

ポイントは③で「評価額そのまま × 1.4%」にしないことです。特例が外れた土地(商業地等)の課税標準には評価額の約70%という上限(負担調整措置)があるため、いきなり満額では課税されません。だから倍率は6倍ではなく、次のとおり約4倍で計算するのが現実的です。

相続した築古戸建て。放置か活用かで保有コストが変わる

評価額別シミュレーション(小規模住宅用地)

このセクションの要点:200㎡以下の土地を例に、評価額ごとの「いま」と「外れた後」を並べました。自分の評価額に近い行を見てください。

土地が200㎡以下の小規模住宅用地で、税率を標準の1.4%と仮定した場合の概算です。

土地の評価額 特例あり
(評価額×1/6×1.4%)
特例なし
(評価額×70%×1.4%)
増える年額
600万円約1.4万円約5.9万円約+4.5万円
1,200万円約2.8万円約11.8万円約+9.0万円
1,800万円約4.2万円約17.6万円約+13.4万円

いずれの行も、倍率は約4.2倍で共通です(70% ÷ 1/6 ≒ 4.2)。「6倍」ではなく約4倍が現実的な目安だと分かります。 それでも評価額1,200万円なら年9万円前後、放置している間ずっと上乗せされ続けるインパクトは小さくありません。

※上表は仕組みを理解するための概算です。実際には前年度からの負担調整措置で数年かけて段階的に上がることが多く、初年度は表より低くなる場合があります。正確な金額は課税明細書と市区町村でご確認ください。

200㎡超・都市計画税も忘れない

このセクションの要点:土地が広いと軽減が薄まり、市街化区域なら都市計画税の分も上乗せ。負担増は固定資産税だけではありません。

土地が200㎡を超える部分は「一般住宅用地」として、固定資産税の課税標準が3分の1になります(200㎡までの部分は6分の1のまま)。 軽減が1/6より薄いぶん、外れたときの倍率は最大約2倍にとどまりますが、もともとの税額が大きいので増える金額(円)はむしろ大きくなりがちです。

さらに、市街化区域にある土地には都市計画税(制限税率0.3%)もかかります。都市計画税にも住宅用地特例があり、外れると同じように上がります。

区分 固定資産税の特例 都市計画税の特例
小規模住宅用地(200㎡以下)6分の13分の1
一般住宅用地(200㎡超)3分の13分の2

表は特例が効いているときの課税標準の割合です(出典:総務省 固定資産税の概要・2026年9月時点)。 たとえば評価額1,200万円・小規模住宅用地なら、都市計画税は特例時が1,200万×1/3×0.3%=約1.2万円、外れると1,200万×70%×0.3%=約2.5万円年1.3万円ほど上乗せ。 固定資産税の増分(約9万円)と合わせて年10万円超の負担増になる計算です。

「6倍ちょうど」にならない理由

このセクションの要点:ネットの「6倍」は理論上の最大値。実際は上限と負担調整でならされ、初年度から満額にはなりません。

「6倍」を鵜呑みにすると、必要以上に慌てて解体を急ぐなどの判断ミスにつながります。実額が6倍にならない理由は主に3つです。

逆に、「税が上がるのが嫌だから」と安易に解体するとかえって損することもあります。更地にすると住宅用地特例が完全に使えなくなるためで、その判断基準は 空き家を解体すると固定資産税は上がる?更地6倍の誤解と損しない判断 にまとめました。

いつから上がる?賦課期日1月1日

このセクションの要点:固定資産税は毎年1月1日の状態で決まる税。外れる原因が生じても、上がるのは翌年度からです。

固定資産税には「賦課期日」があり、毎年1月1日時点の状態でその年度の税額が決まります (出典:総務省 固定資産税の概要・2026年9月時点)。

だから、年の途中で勧告や解体など特例が外れる原因が生じても、その年度はすぐには上がりません。次の1月1日をまたいで、翌年度分から反映されます。 裏を返せば、次の1月1日までに状態を改善すれば特例を維持できる余地があるということです。「いつから」の詳しい流れは 特定空家は誰が決める?管理不全空き家の認定主体と手続き空き家の固定資産税はいつから6倍?勧告で住宅用地特例が外れる流れ で確認してください。

今月やること・確認先

このセクションの要点:まず自分の評価額で試算し、増える額を“円”でつかむ。そのうえで放置か活用かを比べます。

「税を払い続けるより、直して家賃を生ませたい」なら、格安の築古を収益物件に変える基本を 空き家投資の始め方|格安中古物件投資入門ガイド で解説しています。上がる固定資産税も、入ってくる家賃があれば「経費」として受け止められるようになります。

※制度の運用や税率・負担調整は自治体・年度により異なります。適用の可否や具体的な税額は、必ず総務省の固定資産税の概要や物件所在地の市区町村でご確認ください。

次に読むべき記事

このセクションの要点:「特例の仕組み → 外れる引き金 → 実額 → 払い過ぎ確認 → 活用」の順で読むと、空き家の税の地図が一枚にまとまります。

まとめ

空き家の固定資産税が「いくら上がるか」は、課税明細書の土地の評価額さえ分かれば自分で試算できます。 式は「評価額×70%×1.4%」−「評価額×1/6×1.4%」。倍率は6倍ではなく約4倍が現実的な目安です。

大事なのは、倍率でおびえるのではなく「年いくら増えるか」を円でつかむこと。評価額1,200万円なら固定資産税と都市計画税で年10万円前後——この数字を握ってはじめて、放置・解体・活用を冷静に比べられます (出典:総務省 固定資産税の概要・2026年9月時点)。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務上の助言ではありません。 税額の計算や適用の可否は、必ず物件所在地の市区町村や税理士・司法書士など専門家にご確認ください。