鍵の束。生活保護受給者の入居受け入れを検討する大家のイメージ

「空室が長引いていたところに、生活保護を受給されている方から入居の問い合わせが来た。 受け入れていいものか、正直迷っている」——築古戸建て投資家からときどき寄せられる相談です。

様々な偏見から、生活保護受給者様の入居を断ってしまう大家さんは少なくありません。 しかし実は、生活保護制度には「住宅扶助」「代理納付」という、大家にとって心強い 公的な仕組みが用意されています。

この記事では、生活保護受給者様の入居を受け入れる際のメリットと、事前に知っておきたい 注意点を、格安中古物件投資の実践知見とあわせて解説します。格安中古物件投資そのものの 基本を先に押さえたい方は、 空き家問題を「資産」に変える。格安中古物件投資入門 もあわせてご覧ください。

なぜ大家は生活保護受給者の入居を敬遠しがちなのか

「家賃を滞納されるのではないか」「トラブルが起きたときに対応できるか不安」—— こうした漠然とした不安から、様々な偏見をもとに生活保護受給者様の入居を 断ってしまう大家さんは、残念ながら少なくないのが実情です。

その結果、生活保護受給者様にとって住居の選択肢は極端に狭くなっています。 見方を変えれば、他の大家さんが敬遠しがちなこの層にこそ、長期空室に悩む 築古戸建て投資家が目を向ける余地があるとも言えます。

家賃を滞納されるのでは
大家が抱きがちな不安1

近隣トラブルになるのでは
大家が抱きがちな不安2

保証人が立てられないのでは
大家が抱きがちな不安3

こうした不安は理解できるものですが、実は「家賃滞納」については、生活保護制度そのものに 対策となる仕組みが存在します。次の章で詳しく見ていきましょう。

メリット:住宅扶助と代理納付で家賃滞納リスクが下がる仕組み

生活保護には、生活を支えるための8つの扶助があり、そのうちの一つが家賃相当額を 補う「住宅扶助」です。さらに、この住宅扶助費を受給者本人ではなく、 福祉事務所が大家へ直接支払う「代理納付」という制度も用意されています (出典:国土交通省「住宅扶助に係る代理納付制度の活用等による生活保護受給者等の民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するための調査検討業務 報告書」)。

2020年4月からは運用が見直され、家賃等を滞納している場合や、セーフティネット住宅に 新たに生活保護受給者様が入居する場合は、原則として代理納付を適用する取り扱いに 変更されました (出典:公益社団法人全宅連「【国土交通省】生活保護制度における住宅扶助の代理納付に係る留意事項について」)。

図解:住宅扶助費「代理納付」の家賃の流れ

生活保護 受給者様 福祉事務所 (住宅扶助費を管理) 大家 (家賃を受領) 本人を介さず家賃相当額が直接大家に支払われる
出典:国土交通省「住宅扶助に係る代理納付制度の活用等による生活保護受給者等の民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するための調査検討業務 報告書」をもとに作成

代理納付が適用されれば、家賃は受給者様の手元を経由せず、確実に大家の口座へ 届きます。もっとも大きな経済的リスクである「家賃滞納」から解放される、という点は、 長期空室に悩む築古戸建て投資家にとって見逃せないメリットです。

※代理納付が適用されるかどうかは、自治体・個々のケースの判断によります。すべてのケースで 自動的に適用されるわけではないため、入居前に管轄の福祉事務所へ確認しておくと安心です。

注意点1:家賃保証会社の審査に通りにくいケースがある

代理納付という心強い仕組みがある一方で、民間の家賃債務保証会社の審査は、 必ずしも通りやすいとは限りません。保証会社によっては生活保護受給者様を審査対象外に している場合や、過去にクレジットカードの滞納・自己破産といった金融事故歴があると、 信販系の保証会社では審査が難しくなるケースがあるとされています (出典:みまもり不動産「生活保護の賃貸審査|落ちる5つの理由と通過率を上げる7つのコツ」)。

一方で、独立系の保証会社の中には、こうした事情に柔軟に対応してくれる会社もあります。 1社の審査で断られたからといって諦めず、複数の保証会社・管理会社を比較検討する姿勢が 重要です。

※保証会社の審査基準・対応可否は各社で異なり、時期によっても変わります。詳細は各保証会社・ 管理会社に直接ご確認ください。

注意点2:受け入れるなら「仕組み」と「独自審査」の二段構えで

家賃滞納のリスクは代理納付でカバーできても、騒音やゴミ出しルールといった 入居後のトラブルまで防げるわけではありません。これは生活保護受給者様に限った 話ではなく、どんな入居者様との賃貸経営にも共通するリスクです。

※以下は当社が実践している審査基準の一例であり、入居審査は各オーナー・管理会社の判断のもとで、 公正かつ適法に行う必要があります。

このリスクへの防衛策は、 築古戸建ての客付け・入居募集のコツ でも紹介している「仕組み」と「人」の二段構えです。まず、代理納付が適用されない ケースに備えて家賃保証会社への加入を条件にする。その上で、問い合わせ時の言葉遣いや 態度など、独自の基準で入居希望者様の"人となり"を丁寧に見極める。 この二段構えを、どんな入居者様に対しても一貫して運用することが大切です。

入居後トラブルを防ぐ二段構えの防衛策

1
代理納付・保証会社で滞納リスクをカバー
2
独自審査で人となりを見極める
属性ではなく
仕組みで判断

「生活保護を受給されているかどうか」という属性だけで一律に入居を断るのではなく、 仕組みでカバーできるリスクと、個別に見極めるべきリスクを切り分けて判断する。 この視点が、長期空室を防ぎながら健全な賃貸経営を続けていくための鍵になります。

入居者を迎える準備が整った広い和室
観点 メリット・注意点
家賃滞納リスク代理納付が適用されれば、家賃が直接大家に支払われるため滞納リスクが下がる
保証会社の審査審査対象外とする会社もあり、複数社を比較検討する必要がある
入居後トラブル代理納付ではカバーできないため、独自審査など別の対策が必要
空室対策としての効果敬遠する大家が多い分、受け入れることで長期空室のリスクを下げやすい

同様のターゲットの広げ方や、家賃を相場より下げて客付けする考え方については、 築古戸建ての客付け・入居募集のコツ|ボロ屋でも入居は決まる でも詳しく解説しています。入居後のトラブル対応にまつわる失敗パターンについては、 ボロ戸建て投資の失敗例7選|築古戸建てで後悔しないための回避策 もあわせてご覧ください。

まとめ:偏見ではなく、仕組みで判断する

生活保護受給者様の入居受け入れには、住宅扶助・代理納付という公的な仕組みに支えられた メリットがある一方、保証会社の審査や入居後のトラブル対応など、事前に理解しておくべき 注意点も存在します。

大切なのは、「生活保護を受給されているから」という属性だけで判断するのではなく、 仕組みでカバーできるリスクと、独自審査で見極めるべきリスクを切り分けて考えることです。 格安中古物件投資の基本については 空き家問題を「資産」に変える。格安中古物件投資入門で、 長期空室を防ぐ客付けの考え方については 築古戸建ての客付け・入居募集のコツ|ボロ屋でも入居は決まる で、それぞれ詳しく解説していますので、あわせてお読みください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、入居審査に関する個別の判断・助言では ありません。制度の詳細は自治体の福祉事務所、審査に関する事項は各保証会社・管理会社に ご確認ください。